サン スペリーSt Supery
サン・スペリーの早わかりポイント
- ラグジュアリーブランド “シャネル” が所有するナパのワイナリー
- ワインはすべて自社畑のブドウだけを使用
- 畑とワイナリーの両方でナパ・グリーン認証を取得し、サステナブルなワイン造りを実践
シャネルがナパで所有する、100%自社畑にこだわるワイナリー
名だたるワイナリーが点在し、ナパのワイン街道として知られる州道29号線。サン・スペリーも、その沿道に位置するワイナリーのひとつ。拠点を置くのは、ナパ・ヴァレーの銘醸地ラザフォードです。
2015年からサン・スペリーを所有するのは、フランスを代表するラグジュアリーブランド『シャネル』。シャネルという華やかな名前に目を奪われますが、サン・スペリーの本当の魅力は、畑からボトルまでを自分たちで担う、実直なエステート・ワイン造りにあります。
『エステート・ワイン』とは、ワイナリーが所有する畑のブドウを使い、自ら醸造・瓶詰めまで行うワインのこと。サン・スペリーでは、すべてのワインを自社畑のブドウから造り、栽培から醸造まで一貫して管理しています。
中心となるのは、爽やかなソーヴィニヨン・ブランと、豊かな味わいのカベルネ・ソーヴィニヨン。そのほかメルローやカベルネ・フランなど、フランス・ボルドー地方でおなじみの品種にも力を注いでいます。
8年にわたる理想の畑探しから始まった“ナパのシャトー”
創業者ロバート・スカリは、ワイン造りを代々受け継ぐフランスの一家に生まれました。
1970年代にナパ・ヴァレーを訪れ、カリフォルニアで上質なワインを造るという構想を抱きます。目指したのは、フランスのシャトーにならい、自社畑を持ち、ブドウ栽培から醸造、瓶詰めまでを一貫して担う「ナパのシャトー」でした。
スカリは理想の畑を求めて8年にわたり候補地を探し続け、1982年、ついにナパ北東部の広大なダラーハイド・ランチを取得します。当時はブドウ畑のない牧場でしたが、土地を見極めながらボルドー系品種を植栽。ほどなくラザフォードにも土地を求め、1989年にサン・スペリーのワイナリーを開きました。
2015年、スカリ家はサン・スペリーをシャネルに譲渡します。シャネルはボルドーの格付けシャトーであるシャトー・ローザン・セグラ、シャトー・カノン、シャトー・ベルリケなども所有し、サン・スペリーは同社が米国で初めて取得したワイナリーとなりました。
オーナー交代後も、上質なエステート・ワインを造り、品質を継続して高めるという創業時からの方針は受け継がれています。
ダラーハイドとラザフォード、個性を育む自社畑
サン・スペリーの名声を支えてきたのが、ナパ北東部の丘陵地に広がるダラーハイド・エステートです。1,530エーカー(約619ha)を超える敷地のうち、ブドウ畑は500エーカー(約202ha)余り。残る広い土地は自然のまま保たれています。
この地を訪れたマスター・ソムリエのティム・ガイザーは、起伏に富む地形と豊かな生物多様性を挙げ、北カリフォルニアでもほかにない場所だと評しました。
畑の標高は約183~335mで、7系統・13タイプに分かれる多様な土壌が広がり、場所ごとに気候条件も異なります。この多様性を生かして、区画ごとに品種や台木、クローン、栽培方法を選び、それぞれの場所に適した栽培を行うことが、力強いカベルネ・ソーヴィニヨンと個性豊かなソーヴィニヨン・ブランを生み出す土台となっています。
一方、ワイナリーを囲むラザフォード・エステートがあるラザフォードは、ナパ・ヴァレーの中心部に位置し、カベルネ・ソーヴィニヨンの銘醸地として名高い栽培地区です。
温暖な昼と涼しい夜、長く乾燥した生育期に恵まれ、マヤカマス山脈から運ばれたミネラル豊かな沖積土壌と砂質粘土ロームが広がります。深く水はけのよい土壌にブドウ樹が根を伸ばすことで、複雑で凝縮した風味が育まれます。
ラザフォードを語るうえで欠かせないのが “ラザフォード・ダスト”。これは、この土地の土壌と、そこから生まれるカベルネ・ソーヴィニヨンの個性を表す言葉。きめ細かな粉を思わせるタンニンを軸に、ココアやエスプレッソ、ダークチョコレートなどを思わせる風味として語られます。
サン・スペリーのラザフォード・エステートでは、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドを栽培。2023年にはラザフォードにソーヴィニヨン・ブランを主体とする新たな自社畑も加わり、この銘醸地の可能性をさらに広げています。
畑から醸造まで一貫したワイン造り
自社畑だからこそ、栽培と醸造を切り離さずに考えられることもサン・スペリーの強みです。
収穫したブドウは手作業と光学式選果機で丁寧に選別。必要に応じて畑の区画ごとに分けて発酵することで、それぞれの土地の個性を見極めます。
赤ワインでは、複雑さを高め、きめ細かなタンニンを得るため、小ロットで開放式発酵を行っています。発酵中はパンチダウン装置によって果汁と果皮を触れ合わせ、より強い抽出につながるポンプの使用を避けています。
特に丁寧な扱いが必要なロットには、伝統的なバスケットプレスを使用。フレンチオーク樽は複数のサイズを使い、サン・スペリー独自の仕様で焼き上げたものを採用しています。
醸造・栽培部門を率いるのはマイケル・ショルツ。ワインメーカーのブルック・シェンクとともに、長年にわたって品質向上に取り組んでいます。ソーヴィニヨン・ブランの生き生きとした表情から、カベルネ・ソーヴィニヨンの深みまで、異なる品種と畑の持ち味を丁寧に引き出すことが、サン・スペリーの一貫した姿勢です。
次世代へつなぐ、サステナブルなワイン造り
サン・スペリーは、土地と環境を次世代へ引き継ぐため、畑とワイナリーの両方で持続可能な運営に取り組んでいます。
ナパ・グリーン認証の取得も、その取り組みのひとつです。ナパ・グリーンは、畑とワイナリーをそれぞれ審査するサステナビリティ認証。畑では再生型農業や土壌の健全性、生物多様性、水利用、気候変動への対応などを、ワイナリーでは水・エネルギーの利用、廃棄物や温室効果ガスの削減などを対象とし、どちらにも働く人々への配慮が含まれます。サン・スペリーでは、畑が2008年、ワイナリーが2012年に、それぞれ認証を受けています。
水資源の管理では、ワイナリーの水使用量を過去5年間で50%削減し、工程で使った水はすべて再利用しています。畑の灌漑には雨水と再生水を活用。エネルギー面では、太陽光発電によってワイナリーの電気料金の94%をカバーしています。また、醸造後のブドウの果皮や種などを堆肥にして畑へ戻しています。カバークロップの活用、野生動物の通り道の保全、鳥やフクロウの巣箱の設置なども、健やかな生態系を守るための実践です。
シャネルが所有するという話題性だけでなく、土地を育みながら上質なワインを次世代へつなぐ、ワイナリーの実直な姿勢こそサン・スペリーの本来のあり方なのかもしれません。

