アタ ランギAta Rangi
マオリ語で"夜明けの空" "新たな始まり"
マオリの言葉で「新しい始まり」、「夜明けの空」を意味するアタ・ランギは、マーティンボローのパイオニア生産者のひとつ。深みのある優雅で洗練されたピノ・ノワールが世界的評価を確立し、ニュージーランドTOP5に挙げられる生産者です。
アタランギは、1980年にクライヴ・ペイトンと妻のフィル、そしてクライヴの妹アリソンと夫のオリバー・マスターズの4人のパートナーシップによって設立されました。
1980年、クライヴ・ペイトンはマーティンボローの町の外れに、5ヘクタールの痩せた牧草地を購入し、ピノ・ノワールのほか、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、シラーを植えました。そこは”マーティンボロー・テラス”と呼ばれる砂利に覆われたシルト粘土土壌で、約20メートルの深さまで水はけのよい地層がつづき、凝縮したブドウが実ります。”テラス”の評判はすぐさま広まり、マーティンボローは一躍、ニュージーランドを代表するピノ・ノワールのプレミアム産地として認知されました。
ルーツはロマネ・コンティ『エイベル・クローン』
アタランギの畑に植わっているピノノワールの多くはエイベルクローンと呼ばれる、葡萄。今日、ニュージーランドはもとより世界中の葡萄畑に広く植えられているエイベル・クローンのルーツとも言えるもの。
1970年代、あるニュージーランドの旅行者がロマネ・コンティの畑に忍び込み、違法に持ち帰ったブドウの穂木を、ニュージーランドの税関職員であったマルコム・エイベルが没収。オークランド近郊の自園でブドウ栽培もしていたマルコム・エイベルは、ブドウの穂木を検疫検査した後、自分の畑に植えたといいます。これがエイベル・クローンのはじまりです。
エイベルの知人であったクライヴ・ペイトンは、亡くなったエイベル氏から、彼の畑に植えられていたその樹を譲り受け、自分たちの畑に植え足し、それらの樹からピノ・ノワールを造りはじめました。
アタランギの畑とその特徴
現在、アタランギの収穫は計55ヘクタールの畑からなり、その50%は自社畑と一部リース契約により自社で栽培管理し、収量・品質のコントロールを行なっています。
多くの契約畑は、自社畑と同様にシルト粘土質に覆われた水はけのよい土壌で、年間降雨量が平均700mmと少なく、収量は1ヘクタール当たり4トンと低収量に抑えられています。平均樹齢は24年で、これらの畑の条件がアタランギのクオリティの要となっています。
マーティンボローとその周辺一帯は、湾から内陸に向かって吹きつける強い風により、春先の開花時期の結実が難しく、他の地域よりも樹1本あたりの房数が非常に少なく、またブドウの実が風から自己防御するように、果皮を厚くし、風味味を凝縮させるといわれています。
アタランギでは殺虫剤、化学肥料、除草剤などは使用せず、調合剤やワイルドフラワー、地下の自然の土を掘り起こし散布するなど、サステイナブルと一部バイオダイナミック農法を取り入れています。ワイナリーは国際標準化機構(ISO)が発行する、環境マネジメントシステムISO14001に認定されています。
次世代へ受け継がれるファミリー経営
現在、チーフワインメーカーであるヘレン・マスターズは、クライヴ・ペイトンの妹アリソンの娘で、高校時代からアタランギの収穫や畑仕事を手伝ってきました。ヘレンはニュージーランドのマッセー大学で食品テクノロジーを修学した後、1994年にアタランギのチームに加わり、2005年ヴィンテージからクライヴと一緒に醸造に携わっています。ヘレンは現在、畑仕事から始まり、すべての工程におけるマネージメントに身を置いています。
ウェリントンで開催されたインターナショナル・ピノ・ノワール2010において、アタランギはNZピノ・ノワールにおける「グラン・クリュ」、「もっとも偉大な成長」と称賛した“Tipuranga Teiteio Aotearoa”賞を受賞しました。それは同社のピノ・ノワールが長年にわたり、品質評価・知名度において、ニュージーランド国内のピノ・ノワールの発展・成長に大きく貢献したことを表彰したものです。
2011年に訪問したアタランギのワイナリーではオーナーのフィルと、ワインメーカーのヘレンが、アテンドしてくれました。
女性ワインメーカーらしく、丁寧なワイン作りが特徴的。 新しく、今回の訪問で知ったのは、今ニュージーランドで人気のピノグリは、アタランギでは、15年以上前から栽培していたってこと。フィニッシュの、深みがたっぷり感じられ、流行りのピノグリとは、全く違います!