フロッグス リープFrog's Leap
カエルラベルのかわいいオーガニックワインの造り手
穏やかなジェントルマン、ジョン・ウィリアムス氏のワインに魅了された若き日々
ウエスタン・ニューヨークの代々続く酪農場一家に生まれたジョン氏は、家の仕事を継ぐべく、コーネル大学でチーズ造りを学ぶ。
学費を稼ぐために働き始めた「テイラー・ワイン・カンパニー」で、彼は生まれて初めて、ワインに出会った。ワイナリーいっぱいに充満するワインの香り、ワ イン造りが持つ歴史・伝統、それらが、若き日のジョン氏を魅了した。ワイン醸造に自分の将来を見出したジョン氏は、コーネル大学卒業後、カリフォルニア州 立大学デイビス校大学院に進み、Enology & Viticulture(ワイン醸造学&ぶどう栽培学)の修士号を取得。ここでも彼は学業の合間に、スタッグス・リープ・ワインセラーズの従業員第1号として働いていた。
大学院卒業後、いったん彼は東海岸に戻り、フィンガー・レイクに新しくできたブティック・ワイナリー「グレノラ・ワインセラーズ」のワインメーカーとな る。ここで彼は、ワイン造りだけでなく、ラベルのデザイン、ワイナリーとしてのビジネスプランの立て方、人の雇い方・使い方など、ワイナリー経営全体に関 わるノウハウを学び、身に付けたのだ。
再びカリフォルニアに居を移し、1981年友人のラリー・ターリー氏と共同で、フロッグス・リープをセントヘレナに設立。1994年、ターリー氏とワイナ リーを分け、ジョン氏は「フロッグス・リープ」の名前と共に、現在のラザフォード(Rutherford)に移動した。
ワインづくりは「最高の人生の楽しみ」
ナパと言えば、潤沢な資金をバックボーンに、広大で豪華な家を持ち優雅に暮らす、いわゆるリッチな人々の「ドリーム・カム・トゥルー」の場だと思う人が、現在では数多くいる。実際、そういうワイナリー・オーナーも少なくない。
しかし、酪農一家出身のジョン氏には、それがあてはまらない。フロッグス・リープを設立する際、彼は自分の宝物だったBMWのバイクを売って、資金を作っ た。「今だって、決して金持ちの部類には入らない。両親も、まだ酪農をやっているしね」と、ジョン氏は微笑んで語る。
「そもそも私達は、ビジネスの世界で正当とされる尺度で、成功の度合いを計ってはいないんだ。どれだけ新しい建物を建てたか、どれだけ畑を買ったか、どれ だけワイナリーが大きくなっていったか、どれだけ儲けたか、そういうものに私は魅力を感じない。サクセス・メイキングに没頭するあまり、人生の楽しみを失 うなんて、おかしいだろう?」
その彼の言葉を証明するのが、フロッグス・リープの生産量だ。実に10年前から、その生産量が変わっていない。ワイナリーとしての収益はもちろん大切だ が、必要以上に欲張ったり、もっと規模を大きくしていくことによって、「生きることの楽しさ」が失われたり、環境が破壊されていくのは、彼らのビジネス・ スタイルから外れてしまうのである。
環境共生からオーガニック・ワインへ
環境、これもフロッグス・リープにとっては重要なキーワードだ。1994年に移ってきた当時のRutherfordは、生物というものが存在しないほど有毒 性の高い、非常に不健康な土地だったと言う。ジョン氏は、益虫、害虫を食べる鳥、土地を肥やす植物などが混在する「バイオ・ディヴァーシティ」(生物的多 様性)が必要と考え、敷地内に野菜を植え育てることにより、その効用を研究した。
それが、98年からのオーガニック・ワイン造りへと発展していったのである。
最高のワインとは、その土地の地質学上の性格、葡萄が育つ土壌・気候の、最も簡潔な表現そのものでなければならない。何よりもテロワールに正直であるこ と、ワインは、そのテロワールの表れであること、これをジョン氏は強調する。「ワインを造っていると、人は時々バランスを失ってしまう。人に強い印象を与 えることを優先したり、ワインに特別な意味を持たせたり、他の人が作っていないようなワインを造ってるんだぞといった自慢話に終始したりね。違うんだよ。 ワインは人生の楽しい表現の一つであるべきなんだ。ワインは、地球のナチュラル・プロダクトなんだってことを忘れてはいけないんだ。」
"Time's fun when you're having flies."
英語で、時間がたつのがとても早いことを、「Time flies」という表現をする。そして、fliesはまた「ハエ」の複数形でもあり、カエルの大好物だ。つまり、フロッグス(=カエル)になってハエを追いかけている時は楽しくて、楽しければ楽しいほど、時は飛び去って行く、という意味。「HAVING FUN」愉快に楽しく過ごす、これはジョン氏自身、そしてワイナリー全体が大切にしている姿勢だ。