アリシアンAlysian

伝説の醸造家ギャリー・ファレルが造った最後のワイン

アリシアンは、2007年ソノマのヒールスバーグに設立されたワイナリー。全米ワイナリー・オブ・ザ・イヤー殿堂入りの醸造家ギャリー・ファレル氏が、長年の同志である栽培家ビル・ハンブレヒト氏とともに作り上げました。

アリシアンの創業者ギャリー氏とビル氏は、ソノマで成功の道を駆け上がったワイン界の伝説的人物です。

アリシアン創業以前、自身の名を冠するワイナリーで“全米殿堂入り”を果たしたギャリー氏は、今まで培った全てを詰め込んだ集大成となるワインの創造を目指しました。そのためワイナリーを売却し、「少量ながらも、一切妥協しないピノノワールとシャルドネを造る」という目的で、アリシアンを設立したのです。

Alysianはギリシャ語を起源とする言葉で“旅”そして“直観的な創造性”という二通りの意味を持ちます。彼らが手掛けた珠玉のワインは、今も芸術品の域と称賛の声を浴び続けています。

創業者の二人は2012ヴィンテージを最後に引退。ワイナリーは現在、ビル・ハンブレヒト氏の孫であるウッディ・ハンブレヒト氏へバトンタッチされています。

2012年以前のアリシアンは、ソノマ産ピノノワールの歴史に欠かせない醸造家であるギャリー氏のワインを飲むことができる、貴重なワインです。

伝説の醸造家ギャリー・ファレル

ギャリー氏はソノマ州立大学の在学中にワインの虜となりました。ロシアン・リヴァー・ヴァレーのアイコン的存在である、恩師デイビス・バイナム氏との出会いをきっかけに、若くして一流のワイン造りに触れることとなります。

1978年よりデイビス・バイナム・ワイナリーの常勤ワインメーカーとなり、ギャリー氏が初めて造ったピノノワールはコンクールに出品されました。その際、数多のプレミアムワイナリーの礎を築いた偉大なる醸造家アンドレ・チェリチェフ氏は、ギャリー氏のデビュー作を飲んで絶賛したと言われています。

その後ギャリー氏は、カリフォルニア屈指の栽培家であるロキオリが自社畑のブドウから造ったエステートワインや、リムリック・レーンなどで醸造を手掛け“カリフォルニア・ピノノワール”を世界に知らしめました。

そして、1982年に自身のワイナリー『ギャリー・ファレル』を立ち上げます。ギャリー氏がワイナリーを去るまでの間に、全米ワイナリー・オブ・ザ・イヤーを10度も受賞し、このワイナリーは殿堂入りという栄光に輝きました。受賞回数はソノマ歴代１位の記録であり、アメリカ全体で見ても歴代３位タイとなります。

数々の偉大な記録を残したギャリー氏は、ソノマで最も尊敬される醸造家の一人として歴史に名を刻んでいます。

先見の明をもつ栽培家ビル・ハンブレヒト

ビル氏は著名な投資銀行家です。Apple、Amazon、Googleなど今や現代社会に欠かすことのできないIT企業の株式公開を担当しました。ベンチャー新興市場の重要性に一早く気付き支援したビル氏の戦略には、目を見張るものがあります。

ビル氏の先見の明は、サイドビジネスであったブドウ栽培とワインの分野においても発揮されることとなります。

まず始めにシャローン・ワイナリーの株主に。その後、ベルヴェデーレ・ワイナリーを設立しました。またリッジやセインツベリーなど名立たるワイナリーを支援しました。ビル氏は常に有能な醸造家と組み、彼らの描くヴィジョンやワイン造りのサポートに努めてきたのです。

そして、1990年代からギャリー氏のパートナーとなりました。

アリシアンの自社畑について

フロードゲート・ヴィンヤード
フロードゲート・ヴィンヤードは、ロシアン・リヴァー・ヴァレーの中心地ミドル・リーチに位置します。畑は有名なリッチー・ヴィンヤードやキスラーに隣接しています。 1971年植樹のピノノワールは、ロシアン・リヴァー・ヴァレーのみならず、アメリカ国内において最も古い畑のひとつと言われ、希少な古樹のピノノワールが育まれています。

グリスト・ヴィンヤード
グリスト・ヴィンヤードは、ドライ・クリーク・ヴァレーの歴史ある畑です。1895年植樹のジンファンデルが存在し、「ハンブレヒト・クローン」としてUCデイヴィス校に認定されています。 ジンファンデルが6割を占め、ソーヴィニヨンブラン、プティシラー、ヴィオニエなどを栽培しています。

ギャリー・ファレルとロキオリの強い繋がり

アリシアンは、カリフォルニア屈指のぶどう畑ロキオリからブドウの供給を許された数少ないワイナリーのひとつです。ギャリー氏には、ロキオリによるエステートワインのコンサルタントを務めた実績と、深い信頼関係があります。

ロキオリのブドウを購入できるのは、ウィリアムズ・セリエム、ギャリー・ファレル、そしてアリシアンなど極わずかに留まります。

カリフォルニア中の醸造家が供給を切望する中で、ギャリー氏の関わったワイナリーが2つ入っていることからも、ロキオリが彼に寄せる信頼が見て取れます。

アリシアンによる一切の妥協なきワイン造り

ギャリー氏が長い年月をかけて培った強固な絆は、ロキオリだけではありません。ロキオリの他にも、ソノマのエリート栽培家たちと良好な関係を築いていました。

ギャリー氏は、栽培家から極めて上質なブドウを提供してもらった際には、提示された価格に上乗せして購入することも珍しくなかったそうです。また、素晴らしい樽やコルクを提供してくれる会社にも同じようにしたと言います。

“わずかなお金を惜しまず、全てにおいて最高のものを得ること”これこそが、ワインの品質を飛躍的に向上させる最も筋の通ったシンプルな方法だと彼は語っています。

ワインをこよなく愛する伝説の醸造家ギャリー氏がアリシアンで最後に造ったのは、より洗練された長期熟成の価値があるワイン。 カリフォルニアワインを遥かに超越したところへ到達点を見据えて造られたその雫は、今まさに魅力が花開く頃を迎えています。