アヴァニAvani
アヴァニの早わかりポイント
- 『南半球のロマネコンティ』バスフィリップのワイン造りを受け継ぐ最後の弟子
- 有機栽培・野生酵母による発酵・無濾過など手作業による自然なワイン造り
- 少量生産のプレミアムワインを造るブティック・ワイナリー
- ピノノワールだけじゃない。実はフラッグシップワインはエレガントなシラー
南半球のロマネ・コンティ「バス フィリップ」のワイン造りを受け継ぐ
、少量生産のカルトワイン
アヴァニはオーストラリアのヴィクトリア州、メルボルンから車で1時間半ほど南に走ったモーニントン・ペニンシュラに位置します。この地域は南北を海に挟まれており、冷たい風が吹くことで比較的冷涼な気候となり、高品質なピノノワールの産地とされています。
アヴァニでは冷涼な産地の特性を生かしたピノ・ノワール、シャルドネのほかにも、ピノ・グリ、ゲヴェルツトラミネールなどのアロマティックな品種や、冷涼地域のシラーも造っています。
アヴァニを手掛けるシャシ・シンは、インドの出身。彼女はマハーシダヤナンド大学で化学の修士号を取得した後、シェフである夫のデヴェンドラと結婚し、オーストラリアに渡り30年、レストランを運営していました。
レストランで、ワインに触れるうちシャシの中でワインへの関心が芽生え、1998年には自社畑を購入。さらにチャールズスチュアート大学でブドウ栽培とワイン醸造学を学び、ワイン造りが始まりました。
ワイナリー名であるAvaniとはサンスクリット語で「the earth=地球」や「大地」を意味します。“偉大なワインは偉大な大地から造られる”という考えをモットーに、有機栽培による高品質なブドウ作りを実施している小規模なブティック・ワイナリーです。
バスフィリップのワイン造りを引き継ぐ
アヴァニの当主シャシ・シンは、「バスフィリップ・ワインズ」の醸造家であるフィリップ・ジョーンズの師事のもと、2004~2012年の8年間、バスフィリップ・ワインズのワインメイキングに携わりました。バスフィリップ・ワインズは、フィリップ・ジョーンズがたった一代で“南半球のロマネ・コンティ”と言われるまでに登りつめたオーストラリアのブティックワイナリーです。
フィリップ・ジョーンズの教えは「正しいブドウ栽培を行っていれば、味わいは生まれる」
ブドウ樹の密植・徹底された低収量・バイオダイナミック農法の実施など、ピノ・ノワール、シャルドネの栽培からワイン醸造までの全ての基本がバスフィリップ・ワインズで培われました。
2020年、バスフィリップ・ワインズは当主のフィリップ=ジョーンズが高齢のため引退したため、ドメーヌ・フーリエのジャン=マリー=フーリエが新たにワインメーカーとして就任。そのため、バスフィリップのワイン造りを受け継いだ最後の語り部が、アヴァニを手掛けるシャシであり、造られるワイン「AVANI WINES」なのです。
フラグシップは冷涼地域のエレガントシラー
バスフィリップで学んだシャシですが、実はアヴァニのフラグシップワインはピノノワールではありません。
当初はアヴァニの自社畑でのピノノワール栽培に希望を抱いていました。しかし偉大なピノノワールを作るためにできることは全て試しましたが、ここでは満足いくピノノワールを育てることができなかったといいます。
このときフィリップ・ジョーンズにシラーを植えるよう助言され、誕生したのがフラッグシップとなる冷涼地域のエレガントなスタイルのシラーでした。
アヴァニ・シラーは、自社畑で栽培されたブドウだけを使用しています。早めの収穫を行うことで果熟はしているものの、アルコール度数は11~12%と低く、オーストラリアのシラーズにはなかなかみられないスタイル。
ブドウ畑では他のワイン同様、化学薬品や農薬を一切使用せず、バイオダイナミック農法を実施しています。ブドウの凝縮感を高め、さらに健全なブドウを選果することで1ヘクタール当たりの収量は17ヘクトリットルまで抑えます。
わかりやすく言うと、100×100mの畑から造られるワインは約180ケースほど。この数は高値で取引されているブルゴーニュやボルドーのワインよりもかなり収量が少なく、アヴァニのこだわりが感じられます。
目にしたときに入手しなければ、同じヴィンテージにはなかなか出会えないカルトワイン的な要素にも納得がいきます。
手間暇を惜しまないアヴァニのワイン造り
ブドウ栽培からワイン造りに至るまで、「ミニマル・インターベンション(最小限の介入)」のアプローチを採用し、その土地と育ったブドウを最大限に表現した個性的なワインを造っています。
ブドウ畑では化学肥料や農薬を一切使用せず、自然の降雨のみで灌漑は行いません。土壌の健康やそこに住む微生物の保護、自然本来の生態系や環境作りに重点を置いています。
収穫はすべて手摘みで行われ、ワイナリー施設内での果汁の移動もバケツを用いた手作業で行われます。
果房や果汁へのストレスやダメージを一切与えず、徹底した信念のもと造られるワインは、ブドウ品種による差はあれど、年間に150~200ケースほどしか造られず、毎年入手困難なワインとなっています。