ヘンドリーHendry
『ヘンドリー』はワイナリーとしては1992年設立と歴史は浅いですが、ブドウ栽培家としては60年以上もの歴史があります。
禁酒法後、ナパでブドウ栽培が広がろうとしていた頃、カリフォルニア UCバークレー校とデイヴィス校で農学の教鞭を取っていたジョージ・ホワイト・ヘンドリーが1939年、妻と現在のヘンドリー・ランチを切り拓いたことに始まります。ジョージ・ホワイト・ヘンドリーは農作物の品種改良、生育方法を研究し、さまざま植物や果物を畑で育て、その一部に醸造用ブドウ樹を植えました。
多くの他の栽培家が気温の高い国道29号沿いにブドウを植えていたのとは反対に、国道から少し西へ入った緩やかな高台の地にブドウを植えました。そこはカーネロスとマウント・ヴィーダー地区のほぼ中間位置し、サン・パブロ湾から涼風が直接吹き抜け、西側に聳え立つマウント・ヴィーダーがちょうど温暖な気候を保つテラス的な役割をなし、冷涼温暖な絶好の栽培条件にあります。
この涼風と一定の温暖な気候がヘンドリーのブドウをゆっくりと成熟させ、酸度と熟度が理想的な生理的成熟を可能にしています。
ロバート・モンダヴィとの取引
父の後を引継いだジョージ・O・ヘンドリーは、60年代後半から70年代初めにかけてのロバート・モンダヴィらの登場により、それまで重視していたブドウの収量よりも質が重視されるようになったことに気づき、ヘンドリーの畑にも灌漑を施し、作物をすべてブドウに植え替えました。
さらに微妙に異なる土壌と高台の位置に、それぞれ生育のスピードが異なる品種やクローンを植え替えました。ジョージは25年前からそうした区画ごとの植付けをいち早く行ってきたパイオニア・グローワーといえます。
早くからその功績と優れたブドウ栽培を目にしていた“ロバート・モンダヴィ”は、ぜひ自分たちのワインにヘンドリーのブドウを使いたいとジョージに申し出て、ブドウ供給者の契約を結びました。
なかでも特長的な優れたクオリティーのブロック8カベルネ・ソーヴィニヨンのブドウは、モンダヴィのリザーブワインとオーパス・ワンに使用することになりました。ヘンドリーのブドウは2001年までモンダヴィへ供給され、ブドウの取引価格は当時、ナパ・ヴァレーで最も高い値が付けられていました。
またカベルネ以外にも、”3R”ジンファンデルで知られる、ケント・ローゼンブルムがヘンドリーの畑名を冠したジンファンデルをリリースするなど、生産者の間でヘンドリーのブドウの評判は高まりました。
1992年に自社ラベルでワインをリリース
長い間、栽培農家であったヘンドリーは1992年、ナパ・ワイン・カンパニーにブドウを持ち込み、自社ワインの生産を開始しました。
80年代、ロバート・モンダヴィの醸造コンサルタントをしていたボブ・ミューラー(現マッケンジー・ミューラー当主)に醸造を委託し、2000ダースのワインをリリース。その後、畑に隣接する土地を整備し、2001年にワイナリーを完成させ、栽培から醸造まで自社で一貫した生産を実現しています。
現在、醸造責任者はジョージ・ヘンドリーと甥であるマイク・ヘンドリーの2人が担っています。
少量生産と徹底した品質管理主義のベテラン・グローワーが送出すワインは、まさに珠玉のワインといえます。