ケラー エステートKeller Estate
ケラー エステートの早わかりポイント
- AVA設立に貢献!ソノマ・ペタルマギャップの開拓者
- 近年話題のラテン系ワイナリーの星、メキシコ人オーナーの先駆け
- ビオディナミのトップ生産者『リトライ』のテッド・レモンを招き完成させた畑
時代を拓いたペタルマギャップの先駆者
ケラー エステートは、1980年代にソノマ・ペタルマギャップの地に畑を拓いたメキシコ人ファミリーによるワイナリーです。
カリフォルニアのワイン産業は長年、畑における主力の働き手であるラテン系の人々によって支えられてきましたが、自らがワイナリーのオーナーとなることは非常に稀!ケラーの存在は、カリフォルニアで暮らすメキシコ人移民たちに夢を与えています。
オーナーであり創業者のアルトゥーロ・ケラー氏は、自動車エンジニアまた自動車部品のサプライヤーとして成功を収めた人物。ヴィンテージカーをこよなく愛する彼は、自動車コレクターの拠点であるサンフランシスコのベイエリアへ向かう途中、ソノマで運命の土地に出会いました。 曲がりくねった道や強い風の吹く丘を走るドライブで、ペタルマにある大きな牧場が売りに出されているのを見つけた瞬間から、その景色に心を奪われたと言います。
1983年、アルトゥーロ&デボラ・ケラー夫妻はペタルマの牧場があった土地を購入しました。当初はセカンドハウスを建てる計画でしたが、ナパやソノマのワイン産地を巡る中でブドウ栽培に興味を持ったケラー夫妻は、自身の土地でブドウを植えようと考えます。
現在「ペタルマギャップ」と呼ばれるこのエリア、当時はまさにワイン産地として“無名の地”でした。 非常に冷涼ゆえ、ブドウが完熟しないだろうと誰もが予想していたためです。
しかしケラー夫妻は、ソノマ南部の内陸にたっぷり降り注ぐ太陽の恵みと、太平洋からの冷たい海風が吹くユニークな気候に、ブドウ栽培の秘めたポテンシャルを感じていました。 UCデイヴィス校のアドバイスを受け1989年に初めてシャルドネを植樹し、ケラーは栽培家としてスタートを切りました。
1993年にはケラーが栽培したシャルドネが初めて、芳醇なスタイルのシャルドネの名手として知られる『ロンバウアー』へと販売されました。
当初は“無名の地”で作られたブドウであることが不安材料となり、「品質が私たちの求める基準に値するか分からない」とはっきり告げられたそうです。しかし、ケラーの手掛けた果実の持つ華やかなミネラルは、大変素晴らしいとすぐに認められました。そして数年間に渡り、収穫した果実の全てが毎年買い取られるほど厚い信頼が寄せられるようになりました。
ロンバウアーとの取り組みによって自分たちのブドウに自信を持ったケラーは、元詰めワインを造るという夢を実現するため、2000年にワイナリーを創設。2001年に念願のファーストヴィンテージをリリースしました。
ケラー エステートでは、ペタルマギャップの冷たい恵みと果実そのものへ敬意を払い、丁寧なブドウ栽培が行われています。鮮やかな酸味とミネラルが顕著に表現された上質な味わいは、ペタルマギャップを知るうえで欠かせないワインと言えます。
ペタルマギャップAVAの設立に尽力した、アナ・ケラー
ケラー夫妻の娘であり、現在ディレクターを務めるアナ・ケラー氏は、メキシコの大学で生化学を修め27歳の若さで畑を引き継ぎました。その活動は自社畑やワインの指揮を取るだけに留まらず、他に類を見ないユニークな“ペタルマの地”の啓蒙にも及ぶ幅広いものとなります。
そして2013年、アナ・ケラー氏は「ペタルマ・ギャップ・ワイングロワーズ・アライアンス」の役員に就任し、AVA設立のために大きく尽力しました。
ペタルマギャップAVAとは
ペタルマギャップとは2017年12月に新設されたカリフォルニア内のAVAで、ソノマ・ロシアン リヴァー ヴァレーの南西に位置しています。コースト山脈が途切れたエリアのため、内陸でありながら太平洋からの霧と冷たい海風が入る特徴的な地形を有します。
ペタルマギャップは「ペタルマの谷間に通る、風のトンネル」を意味し、風の影響を考慮して定義された世界初の栽培地域分類です。太平洋から時速8マイル(12.87km)以上の風が吹き抜ける場所を境界にAVAが定められました。
強く冷たい風の影響で、ブドウの収量は非常に少なくなり収穫時期も遅くなりますが、鮮やかな酸味や華やかで凝縮感のある果実味がワインに表れます。
『リトライ』のテッド・レモンと築いた、再生農法の畑
1998年に畑を引き継いだアナ・ケラー氏は、2001年から『リトライ』のテッド・レモン氏を醸造家として招き、有機農法と再生農法に取り組みました。
テッド・レモン氏は、ブルゴーニュの名門ドメーヌで栽培・醸造の最高責任者を務めた唯一無二の逸材であり、究極のビオディナミを体現させた世界的に見ても数少ない生産者です。ケラー エステートでは、羊の飼育から始まり5年がかりで、放牧による草刈りと肥料供給のサイクルを完成させました。ワインの品質は年を追うごとに向上し、ケラー エステートの躍進は高く評価されることとなりました。
現在は『コスタ・ブラウン』や『メリー・エドワーズ』でワイン造りに携わったジュリアン・タイクマン氏がワインメーカーを務めています。
ケラー エステートの自社畑
ケラー エステートでは長年にわたり果実と畑を探求した結果、持続可能な有機農法と再生農法が取り入れられています。ブドウを育む環境は、ミツバチの飼育、フクロウやコウモリによる害虫対策、200頭以上の羊を放牧し草刈りと肥料供給を行うことなどで形成されます。また水の供給源である池はシステムによって慎重に管理されています。
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La Cruz Vineyard
ラ・クルーズ・ヴィンヤードは、1989年に初めてシャルドネが植えられたケラー エステートの起点であり中心となる畑です。現在はシャルドネの他に、ピノノワール、シラー、ヴィオニエ、ピノグリが栽培されています。サンパブロ湾海底由来のミネラルが豊富な粘土質の土壌で、鮮やかな酸とミネラル、特徴的なスパイスの香りがトレードマークの畑です。
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El Coro Vineyard
エル・コロ・ヴィンヤードは、ケラー エステートの尾根に位置するローム層の畑で、ラ・クルーズ・ヴィンヤードよりもさらに強い風が吹いています。ピノノワールのみが栽培されており、繊細かつ複雑なアロマ、しっかりとしたタンニンにより骨格のあるワインが醸されます。
自社畑のブドウから造る、カジュアルライン『カーサ』
カーサ・ワインズは「家族や友人と毎日カジュアルに楽しむことのできるワイン」として、アナ・ケラー氏によって立ち上げられたレーベルです。主力の自社畑ラ・クルーズ・ヴィンヤードのブドウを使った高品質なワインの、いわゆる二番ブドウとは到底思えない味わいには驚かされます。
エレガントさが際立つケラー・シリーズに対して、カーサ・シリーズはフレッシュであり、“ペタルマギャップらしい”鮮烈でストラクチャーのしっかりした味わいがより前面に出ています。
ソノマ注目産地ペタルマギャップの高いポテンシャルを、ケラー エステートのワインでぜひご堪能ください!