ボーリュー ヴィンヤードBeaulieu Vineyard
ボーリュー ヴィンヤードの早わかりポイント
- 禁酒法を乗り越えナパで100年以上続くワイナリー
- 伝説的醸造家アンドレ・チェリチェフを招きナパの発展に貢献
- この土地の個性『ラザフォードダスト』見つけ出す
- 元祖ナパカルトジョージ・デ・ラトゥール・プライベート・リザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨン
- 2022年ジェームス・サックリングのワイン・オブ・ザ・イヤーで100点満点&1位獲得
100年以上ナパを見つめ、導いてきた真の立役者
ボーリュー・ヴィンヤードは、有名ワイナリーが軒を連ねるハイウェイ29号線沿いに建つナパ有数の歴史あるワイナリー。
1900年、フランス・ボルドー出身のジョージ・デ・ラトゥール によって創設されました。
ワイナリーの名前「ボーリュー」は、 妻・フェルナンデがラザフォードの地を見た際、 “Quelle beau lieu !(なんて素晴らしい場所なの!)”と言った事に由来しています。
ボーリュー・ヴィンヤードの功績は多岐にわたります。中でも醸造家アンドレ・チェリチェフをナパに呼び寄せたことは、禁酒法以降のナパに大きな影響及ぼし、ボーリュー・ヴィンヤードだけでなくナパの地域全体が発展するきっかけとなりました。
また、アンドレ・チェリチェフが醸造を担っていた時代、元祖ナパカルト“ジョージ・デ・ラトゥール ・プライベート・リザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨン”を生み出して一躍名声を得ました。
しかし、素晴らしいのは過去だけではありません。
2022年にはジョージ・デ・ラトゥール ・プライベート・リザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨン2019が、著名評論家ジェームス・サックリングのワイン・オブ・ザ・イヤーにおいて、100点満点で堂々の1位に。
現在でも、ボーリュー・ヴィンヤードは革新的な最新技術と長年培った伝統を組み合わせ、卓越したナパ・ヴァレーのワインを造り続けています。
ボーリューヴィンヤードを偉大にした二人の男たち
ボーリュー ヴィンヤードを語る上で、無くてはならない人物が二人います。
魔の禁酒法時代をくぐり抜けた創設者ジョージ・デ・ラトゥール
創設者ジョージ・デ・ラトゥールはボルドー出身のフランス人。もともとはワインの発酵時に生成される酒石酸をベーキングパウダーに加工するビジネスをしていました。
ジョージは、度々訪れていたナパの気候や土壌がボルドーと共通点していることを見出し、母国フランスに匹敵するナパ・ヴァレーのワインを造るというビジョンを持って、ボーリュー・ヴィンヤードを設立します。
このころ、アメリカ経済は悪化の一途をたどり、禁酒運動の勢いはまさに頂点に達しようとしていました。さらにブドウ樹を蝕む害虫フィロキセラの影響で、かつては豊かだったナパのブドウ畑は数千エーカーにまで減少していたといいます。
この時代に、ジョージ・デ・ラトゥールは未来のナパを導く三つのことをやってのけました。
一つは、フィロキセラ対策。
ジョージ・デ・ラトゥールは、当時発見されたばかりの害虫に耐性のある台木品種に接木した、フランスの苗を輸入。カリフォルニアワイン業界にフィロキセラ耐性のあるブドウの苗を提供していきました。このビジネスは、自身の収益に繋がっただけでなく、病害にあえぐワイン産業の再建に貢献したといいます。
1911年当時のセント・ヘレナ・スター紙には「カリフォルニアは、ジョージ・デ・ラトゥールに非常に世話になった。フランス産の苗木を何十万本も輸入し、カリフォルニア州の重要なブドウ畑のに植えていったのだから」と伝えています。
そして二つ目は禁酒法時代のワイナリー事業存続。
1920年にアメリカで禁酒法が始まると、国内のほとんどのワイナリーは営業停止に追い込まれていきました。
しかし、ジョージ・デ・ラトゥールは、特別に製造が許された教会の礼拝用ワインをアメリカ全土に流通させることでこの難局を乗り切ります。それだけでなく時勢をを逆手に取り、禁酒法下で閉業に追い込まれた生産者たちから醸造設備やぶどう畑を購入して生産量を増やし、ビジネスは4倍にも拡大していきました。
最後となる三つ目は、醸造家アンドレ・チェリチェフをワイナリーに招き入れたこと。
1938年、ジョージは、新しいワインメーカーを探すためにフランスを訪れました。そこで紹介されたのがアンドレ・チェリチェフ。後にカリフォルニアの伝説のワインメーカーと呼ばれるようになる人物です。
伝説のワインメーカー、アンドレ・チェリチェフ
ロシア生まれのアンドレ・チェリチェフは、禁酒法後のアメリカで最も影響力のあるワインメーカー。
ボーリュー・ヴィンヤードに招かれる前は、フランスのパスツール研究所と国立農学研究所でブドウ栽培と醸造学を学んでいました。
チェリチェフはその知識を生かし、ボーリューヴィンヤードのワインの品質を大幅に向上。
ワイナリーだけでなく、地域のワインづくりにも大きく影響を与えてきました。今では当たり前となった発酵中の温度管理やワイナリーの衛生管理、 霜対策のためのヒーターを始めて導入したのも彼。
ほかにも、ワインをフレンチオークの小樽で熟成させるなど、多くの新しい技術や手法をこの地域に導入していきました。
また、自身のワイン造りだけでなく、カリフォルニアのワインメーカーたちを指導したことから“マエストロ”、“アメリカワインの学長”とも呼ばれています。
1947年にセント・ヘレナでナパ バレーワイン学研究所とナパ バレーワイン学センターを開設。ロバート・モンダヴィ(ロバート・モンダヴィ・ワイナリー)、ルイ・マルティーニ(ルイス M. マティーニ)、ジョセフ・ハイツ(ハイツ・セラー)、マイク・ガーギッチ(ガーギッチ・ヒルズ)など、後にカリフォルニアを牽引する多くの醸造家を輩出し、カリフォルニアワイン全体の発展にも大きく貢献しました。
1986年に、ワイン・スペクテーター特別功労賞を受けるなど、多方面からその功績を讃えられています。
ナパ初のカルトワイン“ジョージ・デ・ラトゥール・プライベート・リザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨン”
1938年、ボーリュー・ヴィンヤードにやってきたアンドレ・チェリチェフは、ラトゥール家が『プライベート・リザーブ』と呼んでいた1936年ヴィンテージの非公式ワインを試飲。
その際、試飲したワインがとても素晴らしく美味しく個性的であったため、このワインをボーリューヴィンヤードのフラッグシップとしてボトリングすることを提案しました。
1941年、ボーリュー・ヴィンヤードはプライベート・リザーヴの最初のヴィンテージをリリースしました。ワインの名前には、前年(1940年)他界した創業者に敬意を表して、ジョージ・デ・ラトゥール・プライベート・リザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨンと名付けたといいます。
このワインは国際的な賞賛を浴び、瞬く間にナパ初の「カルトワイン」になりました。
誕生から80年以上が経つジョージ・デ・ラトゥール プライベート・リザーヴ カベルネソーヴィニヨンは、 ナパのワインのスタンダードを造ったのと同時に、ナパ・ヴァレー初の「カルトワイン」として、 そしてボーリュー・ヴィンヤードのフラッグシップワインとして、現在でも輝き続けています。
アンドレ・チェリチェフが見つけ出したラザフォード・ダスト
1938年、プライベート・リザーヴを世に出したアンドレ・チェリチェフはこのワインに、鉛筆の削りかすのようなハイトーンの香りと、きれいな土の香りを見つけました。
チェリチェフはこれがラザフォードの香りそのものであり、テロワールを表現しているものだと気づき、
現在、「ラザフォード・ダスト」という言葉には、品質へのこだわり、達成感、そしてラザフォードの土壌との深いつながりが込められています。
ラザフォード・ダストで栽培されたブドウから造られるワインは、 独特の個性を反映し、その卓越性は不滅の評価を得ています。
多くの国賓をもてなしてきたボーリュー・ヴィンヤードのワイン
1940年代から1950年代にかけて、ボーリュー・ヴィンヤードのワインは国賓をもてなすワインとして、時代の偉人を讃える晩餐会やレセプションで提供されました。
ホワイトハウスでは、ドワイト・D・アイゼンハワー将軍とダグラス・マッカーサー将軍のために。
また、トルーマン大統領はオランダのユリアナ女王にボーリュー・ヴィンヤードのワインを献上したそう。
ワインスペクテイター誌によると、1950年代から1960年代にかけて、ボーリュー・ヴィンヤードは、イングルヌック、チャールズ・クリュッグ、ルイ・マルティーニとともに、ナパ・ヴァレーの「4大生産者」のひとつとみなされていました。
現代に引き継ぐチェリチェフのイノベーション
ボーリュー・ヴィンヤードが素晴らしいのは、過去の偉業だけではありません。
アンドレ・チェリチェフの行った改革は、現在のワイナリー運営でも引き続き行われ続けています。
2008年には、最新鋭のワイン醸造施設が完成しました。これは、フラッグシップワイン“ジョージ・デ・ラトゥール・プライヴェート・リザーヴ・カベルネ・ソーヴィニヨン”専用の醸造施設で、古くからの伝統と最新のテクノロジーを組み合わせ、ワインを生産しているそうです。
現在、チーフ・ワインメーカーを務めるのはトレヴァー・ダーリング。ワイナリー創設から120年間で5人目のワインメーカーです。
2022年、トレヴァーが手掛けた『ジョージ・デ・ラトゥール・プライベート・リザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨン2019』が著名評論家ジェームス・サックリングのワイン・オブ・ザ・イヤーにおいて1位を獲得。得点は、なんと100点満点でした。
これからも、次世代のボーリュー・ヴィンヤードは伝統的な手法だけでなく、革新的なテクノロジーを組み合わせたワイン造りで素晴らしいワインを届けてくれることでしょう。