オレゴン州のワインを徹底解説

オレゴンのワインってどんなワイン?
オレゴン州は、全米で第4位のワイン生産量を誇るワインの名産地です。冷涼気候から生まれる高品質なピノノワールの産地として世界的な注目を集めており、今では、栽培面積の58%をピノノワールが占めるようになっています。
自然豊かなオレゴン州では、環境保全に対する意識も高く、再生可能エネルギーを重視した環境つくりに取り組んできます。ワイン生産者も、サスティナブル(持続可能な環境保全)農法や、バイオダイナミック農法を営むワイナリーが多いのも特徴のひとつです。
このページでは、オレゴンワインの特徴や、おすすめのワイン生産者をご紹介いたします。
目次
オレゴンワインの特徴
オレゴンワインは、年間生産量が5,000ケース以下の小規模生産者が全体の75%を占めるのが特徴。
この規模の小ささゆえに、生産者は細部にまで注意を向け十分に手間をかけ、こだわりを持って高品質なワインを造り出しています。
ここでは、オレゴンワインの気候や地理的特徴を紹介します。
数字で見るオレゴンワイン
- 面積
- 255,026km2 ※日本の約67%
- 人口
- 4,240,137人(2022年)※日本の約3%
- 州都
- セイラム
- ワイナリー数
- 995軒
- ワイン用ぶどう栽培農家
- 1370軒以上
- ワイン用ぶどう栽培面積
- 39,531 エーカー (15,997 ha)
- ワイン生産量
- 75,142トン
※2020年は、コロナ禍と山火事の影響で前年より29%減少 - 主要なヴァラエタル(品種)
- 合計80種が州内に植え付けられているが、ピノ・ノワール、ピノ・グリ、シャルドネ、シラー、カベルネソーヴィニヨン、メルローリースリングが全体の91%を占める。
オレゴン州はどこにある?

オレゴン最大のワイン産地ウィラメット・ヴァレー

オレゴン最大のAVA、ウィラメットヴァレーはコースタルレンジとカスケード山脈の間に広がっています。コースタルレンジが、太平洋からの寒流の影響を和らげ、冷涼な気候に適した 葡萄品種には理想的名生育条件が備わっています。
州内にあるワイナリーの70%がウィラメットヴァレーにあり、なかでも北半分に集中しています。
日本と変わらない年間降水量の謎

オレゴン最大のAVA、ウィラメットヴァレーの年間降水量は約1,100mm。これは雨の多い日本に近い降水量。
決してワイン用の葡萄が育ち易いとは言えない日本と近い降水量なのに良質なワインができるのはなぜでしょうか。 その秘密は雨の降る時期にあります。葡萄にとって、収穫期の雨は対敵。水分を多く含んだ水っぽい葡萄や、病気の原因となってしまいます。
しかし、ウィラメットヴァレーの場合降水は秋から冬にかけて(つまり降雪)。葡萄の生育期間中は雨が少なく、日照量も多いため良質な葡萄が作られ、良質な葡萄からは良質なワインができるのです。
オレゴンワインの産地とその特徴
オレゴンではワインの産地も生産者も種々様々。
オレゴン州内には現在、AVA(=アメリカぶどう栽培地域)と呼ばれるアメリカ政府に認定された地域が21あります。ここでは、個性豊かな各AVAの特徴をご紹介します。

- ウィラメット・ヴァレーWillamette Valley 1
オレゴン州全体の68%を占める州最大のブドウ栽培地域。北米地域で最も涼しく、高品質なワインを生む生産地の一つで、最高のピノノワールを生むことでも知られています。この産地を探す
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ヤムヒル・カールトンディストリクトYamhill-Carlton District2
コーストレンジ、チェハレム山脈、ダンディヒルズの標高の高い地域に囲まれているため、周辺地域よりも雨が少なく、涼しい気候のブドウに最適な栽培条件が得られます。(ウィラメット・ヴァレーAVAに内包)この産地を探す
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チェハレム・マウンテンズChehalem Mountains3
ベンチマークのピノノワールを含むリッチでエレガントで複雑なワインで知られています。(ウィラメット・ヴァレーAVAに内包)この産地を探す
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ローレルウッド・ディストリクトLaurelwood DistrictNEW!!5
2020年6月に新設された新しいAVA。チェハレム・マウンテンズに内包され、25のワイナリーと70のヴィンヤードで構成されています。
- リボン・リッジRibbon Ridge6
周囲のAVAよりも標高が低く、風から保護されているため、気温が高くなり、降雨量が少ない地域。(チェハレム・マウンテンズに内包)この産地を探す
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ローレルウッド・ディストリクトLaurelwood DistrictNEW!!5
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テュアラティン・ヒルズTualatin Hills4
2020年6月に新設された新しいAVA。オレゴン州で最初の商業用ブドウ園があります。
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ダンディーヒルズDundee Hills7
オレゴンワインのパイオニアが多くワイナリーを構える地域。ウィラメット・ヴァレーで最初のピノノワールが植えられた場所。コーストリッジとチェハレム・マウンテンに挟まれているため低地よりわずかに暖かく、霜害も少なく雨量も少ない(ウィラメット・ヴァレーAVAに内包)この産地を探す
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マックミンヴィルMcMinnville8
海から吹く涼しい風は、ピノノワールに力強いタンニンを柱にダークフルーツやスパイスのフレーバーを与え、白ワインには艷やかさと果実味を与えます。(ウィラメット・ヴァレーAVAに内包)この産地を探す
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エオラ・アミティ・ヒルズEola-Amity Hills9
ヴァン・ダザー・コリドーの真東に位置することで、冷たい太平洋の空気が流れ込み、良質な酸と厚い皮を持った粒の小さな良質なブドウが育ちます。(ウィラメット・ヴァレーAVAに内包)この産地を探す
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ヴァン・ダザー・コリドーVan Duzer Cooridor10
ウィラメット・ヴァレーに内包されるAVA。午後になると強い海岸沿いの風が吹くため気温が下がります。これにより、ストラクチャーのある、タンニンと酸味のあるワインが生まれます。この産地を探す
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マウント・ピスガー・ポークカウンティ・オレゴンMt. Pisgah, Polk County, OregonNEW!!11
2022年6月に承認されたウィラメット・ヴァレーに内包されるAVA。6500万年前に海底火山として形成され、その後押し上げられて誕生した山なので、海の堆積物に覆われています。ユニークな地質が、浅い土壌での深い複雑味を持ったブドウを育てています。
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ローワー・ロング・トムLower Long TomNEW!!12
2021年12月に承認されたウィラメット・ヴァレーに内包されるAVA。ウィラメット・ヴァレーの南部では初めてのAVAです。
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ヤムヒル・カールトンディストリクトYamhill-Carlton District2
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サウザン・オレゴンSouthern Oregon13
オレゴン州の南地区のカリフォルニア州の国境まで伸びる地域AVA。州内2番めの大きさを持ちます。5つのAVAを内包し、多様性な土壌をもったぶどう園から優れたワインを生み出しています。
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ウンプクワ・ヴァレーUmpqua Valley14
オレゴン州の最も歴史のあるAVA。ウンプクワヴァレーの複雑な地形は、涼しい地域のぶどう品種と温かい地域のブドウ品種の両方を育てることができます。この産地を探す
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レッド・ヒル・ダグラス・カウンティRed Hill Douglas County15
古代の隆起した海底に由来する火山性土壌を持つ、シングルヴィンヤードのAVA。他のサウザン・オレゴン内AVAよりも骨格のしっかりしたスタイル。(ウンプクアヴァレーに内包)
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エルクトン オレゴンElkton Oregon16
アンプクアヴァレーAVAの11%を占める地域。アンプクアヴァレー最北端で最も標高の低く涼しい地域であり、他のAVAとは異なる品種とワインスタイルを生み出しています。(ウンプクアヴァレーに内包)この産地を探す
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レッド・ヒル・ダグラス・カウンティRed Hill Douglas County15
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ローグ・ヴァレーRogue Valley17
険しい山の谷、多様な気候により、多種多様な強いフレーバーのブドウが育ちます。ピノノワールやシャルドネからテンプラニーリョやヴィオニエまで、世界で最も多様なワイン生産地域の1つです。(サウザン・オレゴンに内包)この産地を探す
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アップルゲート・ヴァレーApplegate Valley18
カリフォルニアの州境からグランツパスのすぐ西にあるローグ川まで北に50マイル伸びています。繊細でベースにミネラルを感じる、豪華でフルボディの果実味たっぷりのボルドーやローヌスタイルのワインが生まれます。(ローグヴァレーに内包される)この産地を探す
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アップルゲート・ヴァレーApplegate Valley18
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ウンプクワ・ヴァレーUmpqua Valley14
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コロンビア・ゴージュColumbia Gorge19
「アメリカで最もユニークなワイン産地」と謳われているコロンビア・ゴージュは、オレゴンとワシントンの肥沃な土壌を含みコロンビア川にまたがっています。素晴らしい甘口の白ワインと甘美な赤ワインを生みます。この産地を探す
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コロンビア・ヴァレーColumbia Valley20
コロンビアバレーAVAは、1,100万エーカーの土地を持つ非常に大きな栽培地域です。オレゴンとワシントンをまたぐ場所に位置しますが、そのほとんどはワシントン州にあります。この産地を探す
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ワラワラ・ヴァレーWalla Walla Valley21
ワシントン州とオレゴン州にまたがるワイン産地。ワラワラ・ヴァレーの3分の1がオレゴン州側にあり、オレゴン内で最も温かい気候。一日の気温変化が大きいため、しっかりとした酸をもった複雑でフルボディのワインを生み出します。(コロンビア・ヴァレーに内包)この産地を探す
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ザ ロックス ディストリクト オブ ミルトン フリーウォーターThe Rocks District of Milton-Freewater22
アメリカで唯一、土壌タイプによって境界を定義されているAVA。土壌のいたるところにある小石や石畳は日中の熱を放射し、特にシラーやカベルネなどの産地の特徴的なワインを生み出しています。(ワラワラ・ヴァレーに内包)この産地を探す
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ザ ロックス ディストリクト オブ ミルトン フリーウォーターThe Rocks District of Milton-Freewater22
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ワラワラ・ヴァレーWalla Walla Valley21
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スネーク・リヴァーSnake River Valley23
スネークリバーバレーは、オレゴン州北東部からアイダホ州南西部にまたがるAVA。オレゴン側では現在のところブドウ栽培地は見られません。
オレゴン州の主なぶどう品種
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ピノノワール
オレゴン州内ブドウ栽培面積の5割強を占めるピノノワールは、オレゴンを代表する品種。このように複雑な香りと味わいを持つ優雅なピノノワールを育むテロワールは、ブルゴーニュを除くとごく限られています。 オレゴンのピノノワールは、一般的に若いうちは赤や黒い色をしたベリーや果実の香りを持ち、 活気があり果実味に富んでおり、瓶内発酵が進むにつれて土の香りやなめし皮、タバコ、マッシュルーム、香辛料の香りが出てきます。
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ピノグリ
ピノグリはオレゴン州内栽培面積の約10%を占める、白ワインの主要品種。まさにオレゴンはピノグリにとって生育上の最適条件を備えています。オレゴンのフルーティーでスパイシーなピノグリは食事との相性が良く、 特にシーフードには最適です。辛口でフルボディのタイプから、キリッと引き締まったシャープなタイプまで様々です。
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その他の赤ワイン品種
オレゴンワインの楽しみの一つは、ピノノワール以外のブドウ品種の透逸なワインが数多くあることです。コロンビア川沿いの内陸部や南西部のより暖かい地区ではメルロ、カベルネソーヴィニヨン、シラー、ジンファンデル等々、そのテロワールに応じた最適品種を選び出すことに成功しています。
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その他の白ワイン品種
オレゴンではシャルドネやリースリングからも優れたワインが造られています。1990年代より新しいクローンを使用し、経験を積み上げながら技術を磨き上げた結果、驚くほどエレガントで複雑な香味をもつ洗練されたシャルドネが造られる様になりました。リースリングからは、辛口、甘口双方の香り豊かなワインが造られ、ゲヴュルツトラミネール、ピノブラン、ソーヴィニヨンブラン、ミューラートルガウ、ヴィオニエからも語るに足るワインが造られています。さらには伝統的な手法から造られるスパークリングワインも注目に値します。
オレゴンワインを知るにはピノノワールから
ワインの中でも「ピノノワールが好きだ!」という皆様へ、アメリカ/オレゴン州のピノノワールはお試しになりましたか?
最も有名なフランス/ブルゴーニュを筆頭に、フランス/アルザス、ドイツ/ラインガウ、オーストラリア/タスマニア島、アメリカ/ソノマ、 アメリカ/サンタバーバラなど、ピノノワールの産地は世界中にあります。
そして、ここオレゴン州も、ピノノワールの銘醸地のひとつ。
オレゴンのピノノワールが、世界中から注目を集めるようになったのは、1979年から1980年にかけて世界中の関心を集める大きな出来事が起こったからです。
まず、最初の出来事は1979年に開催されたフランスのレストランガイド『ゴー・ミヨ』主催のフレンチワイン・オリンピック。ピノノワール部門にて、デイヴィッド・レット氏(ジ・アイリー・ヴィンヤーズ)のオレゴン・ピノノワールが、フランスのトップブランドを抑えて、10位に入賞を果たしました。
さらに翌年1980年、ブルゴーニュの有名メゾン、ドルーアン主催で行われたブラインド・テイスティングにおいて、デイヴィッド・レット氏(ジ・アイリー・ヴィンヤーズ)のオレゴン・ピノノワールが2位に入賞。オレゴンは、ピノノワールの銘醸地として世界的に注目されるようになりました。
現在では、世界的に有名なブルゴーニュの生産者ドメーヌ・ドルーアン、コント・ラフォン、ルイ・ジャドなどもオレゴンでのワイン造りに関心を持ち、進出しています。
オレゴン州の中でも特に、オレゴンの北部に位置するウィラメットヴァレーは、世界中の評論家やワイン雑誌などから評価を受けるピノノワールが数多く造られています。
ウィラメット・ヴァレーは、北緯45度あたりに位置し、フランスのブルゴーニュ地域とほぼ同じ緯度。また、降水量は冬期に多いため雪が降りますが、収穫を迎える夏期の降雨はほとんどなく、ブドウの栽培に適した場所。夏期の昼夜の寒暖差が大きいことも上質なピノノワールの産地として高い評価を受けている理由の一つです。
1987年からは、毎年7月にピノ・ノワールの祭典「インターナショナル・ピノノワール・セレブレーション」が ウィラメットヴァレーのマクミンヴィルで開催され、3日間にわたって世界のピノ・ノワールを対象にしたセミナーや テイスティング・イベントを行い、世界中からワイン生産者やワイン愛好家が集います。
オレゴンでおすすめの
ピノノワール生産者


オレゴンを開拓した生産者たち
1961年、ワイン生産者のリチャード・ソマー氏は、カリフォルニア大学デイヴィス校の同期生たちが否定的だったにもかかわらず、オレゴン州のウンプクワ・ヴァレーをめざして北へ進み、リースリングや少量の他品種を栽培し始めました。
1965年から1968年にかけて、 デイヴィッド・レット氏(ジ アイリー ヴィンヤーズ)、チャールズ・クーリー氏、ディック・エラス氏(イーラス)が、彼らの家族と共にオレゴン北部へと分けはいり、ウィラメットヴァレー北部にヴィンヤードを開園しました。彼らはウィラメットヴァレーで初めてピノ・ノワールを 栽培したほか、ピノグリやシャルドネ、リースリングといった品種も少量栽培しました。
その後、10年の間に、デーヴィッド&ジニー・アデルスハイム夫妻(アデルスハイム)やロナルド&マージョリー・ヴァイルスティーク夫妻、 リチャード&ナンシー・ ポンズィー夫妻(ポンジー)、ジョー&パット・キャンベル夫妻、 スーザン&ビル・ソーコル・ブロッサー夫妻(ソーコルブロッサー)らも、ウィラメット・ヴァレー北部にぶどうを植え付け、オレゴンの礎を築きました。
こうした近代のワイン開拓者たちは、『いつの日かオレゴン州が重要なワイン生産地になる』ことを確信していました。