スターゲイザーStargazer
オーストラリア/タスマニアを代表する生産者の一人
スターゲイザー醸造所はニュージーランド出身の女性醸造家、サマンサ・コンニュー氏が2012年にタスマニア島南部のホバートに設立したブティックワイナリーです。タスマニア島はオーストラリア屈指のクールクライメイト(冷涼)なワイン産地で、高級ワインを生みだす世界屈指の銘醸地です。中でもブルゴーニュ品種やスパークリングワインは世界的にも有名で、世界で最も影響力のあるワインジャーナリストの一人、ジャンシス・ロビンソンMWが最も高く評価するピノ・ノワールもこの産地から生まれています。
スターゲイザーで使用するブドウは南部の銘醸地「コール・リヴァー・ヴァレー」を中心に品種に合わせて栽培地を厳選し、タスマニア島に点在するサブリージョンで栽培しています。
冷涼で海風が吹き抜ける銘醸地、南部のコール・リヴァー・ヴァレーに購入した自社畑(3ha)では、ピノ・ノワール、シャルドネ、そしてリースリングを、更に北部のテイマー・ヴァレーでは契約農家が所有するブドウ畑(2ha)で、ゲヴュルツトラミネールとピノ・グリを管理・栽培しています。テイマー・ヴァレーは南部に比べ気候は穏やかで降雨量も多く、アロマティックなブドウ品種の栽培に適しています。
スターゲイザーは今日の「NEWウェーブ」なオーストラリアワインを象徴するワインブランドで、ワインのスタイルだけではなく醸造面においても大変革新的です。
ちなみに、「NEWウェーブ」なオーストラリアワインとは、これまでの果実味重視な温暖な産地で造られてきたワインとは異なる、テロワールワインやナチュラル系のワインを意味します。これらワインの多くは、クールクライメイトな産地でブドウが栽培され、ピュアで美しい果実の味わいと、高い酸度が魅力な、軽やかなスタイルでオーストラリアに新旋風を巻き起こしています。
自社の醸造施設を持たず、醸造はタスマニア島の観光地としても最も有名な個人所有の美術館、「モナ美術館」に併設される最新設備が揃うワイナリーの醸造施設を間借りし、同じくブティックワインを造る若い造り手達と共に、設備をシェアしながらワイン造りを行います。
現在の生産量は僅か18000本。カルトワインといっても過言ではない程少量ですが、どのワインも飲み手を魅了し、他とは一線を画す上質でナチュラルな、タスマニア島のアイデンティとテロワールを最大限に表現した味わいです。彼女の造るワインは地元オーストラリアのワインファンの間だけでなく、特にワインメーカーの間で高く評価されています。
多彩な才能を持つ醸造家
ニュージーランド出身の醸造家サマンサ・コンニュー氏。地元クライストチャーチの大学で法律と芸術を学んだ学生時代、アートセンターのワインバーでアルバイトをしていました。この時の経験がその後の人生を大きく変えることとなり、進路をオーストラリアのリンカーン大学へと進めていきます。そしてリンカーン大学では一から醸造とブドウ栽培を徹底的に学びました。
コンニュー氏が最初に感銘を受けたワインは、タスマニア島のテイマー・リッジ社が造るリースリングでした。その後15年という月日を経て、今ではコンニュー氏自身がこのタスマニア島の地で、見事なリースリング、更にはピノ・ノワールやシャルドネを生み出しています。
コンニュー氏は2012年、自身のブランドを立ち上げるまでの15年間、世界各国の銘醸地で馬車馬のようにワイン造りに取り組んできました。最初のワインはオレゴン(アメリカ)で手掛けたワインでした。オレゴンでの経験はコンニュー氏をピノ・ノワールの虜にさせるものでした。その後オーストラリア、イタリア、スペインで経験を積んだ後、オーストラリアへ渡り、マクラーレン・ヴェイルのウィラ・ウィラ・ヴィンヤードで10年間シニア・ワインメーカーとして、更にハンター・ヴァレーのタワー・エステイトで数年間ワイン造りに関わってきました。また、近年ではオーストラリアワイン研究所(Australian Wine Research Institute)でもキャリアを積んでいます。
現在ではワイン造りだけでなく、ワインコンクールの審査員も引き受け、国内最大規模のワインコンペの一つ、シドニー・ロイヤル・ワイン・ショーの議長も務めています。
「スターゲイザー」という名に込められた思い
スターゲイザー(天文学者)という名前の由来は1642年、タスマニア島の地にヨーロッパ人として最初に降り立ったオランダ人探検家、アベル・タスマン氏への敬意を称して名付けられました。タスマン氏は東インド会社の社員として航海に立ち、星空を辿り長い航海の末、1642年11月24日にタスマニア島を発見しました。更にその19日後の12月13日、ニュージーランド南島を発見した功績を残しています。
コンニュー氏は探検家、アベル・タスマン氏に深く親しみを感じています。彼女自身、ニュージーランド南島で生まれ、その後タスマニア島に惹かれた点も何か彼と通じ合うところがあるのでしょう。
ワイン名の由来には、他にも空にまつわる理由があります。その一つが、コンニュー氏の高校時代の恩師の言葉に隠れていました。船の乗組員として航海の経験がある恩師は「美術館や博物館、教会に行くときにはいつも上を向くように」とコンニュー氏に話したそうです。なぜなら一番の宝物は頭上に輝いているかもしれないからだと説明したそうです。イギリスの理論物理学者、スティーヴン・ホーキング博士も言います。「いつも星を見上げていなさい、自分の足元を見下ろすのではなく」と。
スターゲイザーという名前のには、このような深い哲学的意味が込められているのです。
産地「タスマニア」について
南緯42.73度。オーストラリア最南端に位置する冷涼なタスマニア島は、本土から240km南部に位置し、近年急速に発展を遂げるワイン産地で、オーストラリアで最も高級ワインを生む産地として知らています。
周囲を海に取り囲まれた緑豊かな島で、粗粒玄武岩からなる山の多い地形を有し、これらの山々がワイン産地の降雨や海風のシェルター的な役割を果たします。
島の中央部と西部に山間部が走り、ワイン産地は北部、東部、南部の沿岸部中心に広がります。中でもスターゲイザーが拠点を置く南部(サウス・コースト)は、小都市ホバート近辺に位置し、島で最初にブドウが栽培された地域です。この地は今日、ピノ・ノワール、シャルドネ、リースリングの銘醸地として世界的に広く知られています。また、早くから冷涼な気候を利用したスパークリングワインが造られてきました。
タスマニア島の気候は穏やかな海洋性気候で、南の海から吹き付ける西風の影響を受け年間を通して島は冷やされ冷涼な気候が保たれます。また海に取り囲まれる地形が故、本土と大きくは異なり、極端な温度変化が少ない点も留意すべき特徴です。
春先ブドウ畑では、標高の低い地点で霜被害も発生するため、農園ではスプリンクラーを利用し水をまき、発芽したばかりのブドウ芽の周りに氷の層を人口的に造るなど、霜対策が行われています。一方、初夏から夏にかけては穏やかな気温が続き、成熟期・収穫期の秋は日中温暖で夜間温度が下がることから、ブドウはゆっくりと成熟していきます。この結果、ブドウは理想的な熟度と高い酸を蓄え収穫の時を迎えます。
タスマニアは、ジャンシス・ロビンソンMWも認める世界屈指のピノ・ノワールの銘醸地です!!
タスマニア産ワインの品質を世界に証明させた出来事として記憶に新しいのは、2017年2月、ニュージーランドで開催されたワイン関係者を集めたピノ・ノワールの世界会議「インターナショナル・ピノ・ノワール セレブレーション」での出来事でしょう。
パネラーの一人であったジャンシス・ロビンソンMWはここで、卓越したワインとして2本のピノ・ノワールを紹介しました。その内の1本は何と、スターゲイザーと同じく、タスマニア島南部の産地、コール・リバー・ヴァレー産のブドウを使用した、Tolpuddle社のピノ・ノワールでした。タスマニアワインを選んだジャンシス・ロビンソン氏の選択は話題を集め、タスマニア産ピノ・ノワールのポテンシャルを世界に証明させた一日となりました。