トレフェッセンTrefethen
トレフェッセンの早わかりポイント
- 50年以上、3世代にわたって続くナパの老舗ワイナリー
- トレフェッセンのナパ・シャルドネは2度も世界一に輝いた歴史的ナパワイン!
- カベルネソーヴィニヨンはDecanter World Wine Awards 2020でBest in Show選出
- 一切の妥協を許さないワイン造りのためブドウは100%自社畑産
ナパヴァレーの名を世界に広めた偉大なワイナリー
トレフェッセンは、ナパヴァレーの中でも南に位置するオーク・ノール・ディストリクトにあるワイナリー。買収劇が相次ぐナパ・ヴァレーにあって50年以上の長きにわたり、家族経営でワイン造りを続けています。また、ナパヴァレーにおいて自社畑産のブドウからワインを造るパイオニアでもあります。
ナパの中でも南部の冷涼な地域で造られるトレフェッセンのワイン・スタイルはまさにエレガント。時代に流されることなくこの冷涼な土地の風土を表現する姿勢を貫いています。
そして、トレフェッセンを語る上で外せないのは、『カリフォルニアワインがまだ世界的に知られていなかった時代にシャルドネが2度も世界一に輝いた』という事実です。1976年のパリテイスティングに続く激震のニュースは、ナパヴァレーの名を世界に広めることに大きく貢献しました。
また近年では、「Decanter World Wine Awards 2020」で、2018年ヴィンテージのシャルドネがプラチナメダルを受賞。アメリカのシャルドネとしては唯一の受賞という大きな快挙を成し遂げました。
また、2017年ヴィンテージのカベルネソーヴィニヨンはテイスティングの最高の栄誉でもあるベスト・イン・ショーに選ばれるなど、トレフェッセンの実力は設立から長い年月を経てもなお、衰えることを知りません。
世界中に衝撃が走ったトレフェッセン1976年ナパ・シャルドネ
カリフォルニアワインがまだ世界的に無名であった1970年代後半、世界のワイン史に激震が走る3つの出来事があったのをご存知でしょうか。
じつは、その中の2つの出来事にトレフェッセンが深く関わっているんです。
最初の出来事が起こったのは1976年。パリでワイン・スクールを主宰していた英国人スティーヴン・スパリュア氏による、カリフォルニアワインとフランス最高級ワインのブラインドテイスティング対決。かの有名な『パリ・テイスティング』(別名パリスの審判)です。
このときの結果はご存知の通り、赤白ともにカリフォルニアワインの圧勝でした。しかしながら、フランスワイン、特にボルドーとブルゴーニュのワインがどの産地よりも優れていると誰もが疑わなかった時代のこと。採点方法への批判や嘲笑といった報道も数多かったと言います。
そして1979年に2つめの出来事が起こります。アメリカのワインがフランスのワインを凌駕する可能性があることにショックを受けたフランスの権威あるレストランガイド、ゴーミヨがワインオリンピックを開催しました。33の国から選抜された330ものワインを10カ国62人の専門家によって評価する史上最大規模のワインテイスティングでした。
結果は、またしてもナパワインが勝利。この時シャルドネ部門において、ブルゴーニュの高級ワインを押しのけて世界一になったのがトレフェッセンのナパ・シャルドネ1976でした。これは、商業的にワインを手掛け始めてからまだ3度目のトレフェッセンが成し遂げた偉業でもありました。
トレフェッセンの快進撃はまだ続きます。
3つめの出来事が起こったのはワイン・オリンピック開催の翌年1980年。ワイン・オリンピックでの結果に興味をもった、ブルゴーニュの有名メゾン『ジョセフ・ドルーアン』のオーナー ロベール・ドルーアンが、自らのドメーヌが手掛ける最高級クラスのピノノワール・シャルドネとの対決を申し出てきたのです。
米国・フランス・イギリスの審査員20人が集まってのブラインドテイスティング。しかも相手はブルゴーニュの大物生産者。誰もがフランスワイン以外に勝ち目などないと確信していました。しかし、トレフェッセン・ナパ・シャルドネ1976は再び勝利することになりました。2倍以上の値段のピュリニーモンラッシェを押さえての勝利でした。
これらの出来事が積み重なった結果、カリフォルニアワイン、ひいてはナパワインが世界中に知られることとなっていきました。
ちなみに、この時の結果に影響を受けたドルーアンは、のちにニューワールドにワイナリーを設立します。これが『ドメーヌ・ドルーアン・オレゴン』です。
ところで「誰がワインオリンピックにトレフェッセンのワインをエントリーさせたのか」トレフェッセンではずっと謎のままでした。もちろん、ワイナリー自身ではないことは確かです。
この謎は、2018年に開催したトレフェッセン50周年を祝う垂直テイスティングでの会で解けることになります。かつてパリテイスティングを手掛けたスティーヴン・スパリュア氏がの司会を務める中、参加者から「誰がトレフェッセンのワインをワイン・オリンピックにエントリーさせたのか」という質問がなされました。
この質問に自分であると答えたのは、なんと司会をしていたスティーヴン・スパリュア氏。長年トレフェッセン夫妻とも交流のあったスティーヴン氏でしたが、これまで一度も打ち明けたことがありませんでした。40年近く経ってようやく真実が判明した瞬間でした。
トレフェッセンの歴史
1968年 ユージーン・トレフェッセンは、サンフランシスコベイブリッジやフーバー・ダムなどのプロジェクトに携わるエンジニアリング会社カイザー・インダストリーズの重役を退職し、趣味としてナパ・ヴァレーに土地を購入しました。
禁酒法等の影響もあり、当時のナパヴァレーではブドウ畑は激減し、プルーンやクルミの果樹園が多い状態。ワイナリーの数は30に満たないほどとなっていました。
しかしユージーンが購入した土地には、荒廃はしていたもののナパの黄金時代、1886年に建設されたワイナリー施設が残っていました。ユージーンの息子、ジョン・トレフェッセンはこの古いワイナリーに可能性を感じ、ブドウ畑の植え替えとエステート・ワイナリーの設立を提案。ここに、トレフェッセンのワイナリーが誕生しました。
設立後すぐに、歴史的なワイナリーの修復やブドウ畑の植え替え作業を開始。その成果は1988年に、『ナパに唯一現存する19世紀の木造グラビティフローワイナリー』としてアメリカ合衆国国家歴史登録財に登録されることになります。
1973年、トレフェセンで最初の商業ヴィンテージをを作成。じつはこの年、シャンパーニュ・メゾンとしては初めてカリフォルニアでスパークリングワインを手掛ける『モエ・シャンドン』のワインもトレフェッセン内で作られたとか。トレフェッセンでの『モエ・シャンドン』造りは、『モエ・シャンドン』が自身のワイナリーを建設するまで5年間続きました。
そして1976年、ワイン・オリンピックでの歴史的な勝利。この成功が、ナパヴァレーに新たな注目を集め、ナパの世界的な評価を上げることに一役買ったことは言うまでもありません。
トレフェセンは、2014年にナパ郡で発生した地震の影響を大きく受けたワイナリーの1つです。歴史的なワイナリーの基礎の一部が崩壊し、再建を余儀なくされました。また、2017年に続き2020年の山火事の発生と逆境も多い中、常に前を向き次世代を見据えた造りを行っています。
現在、父ジョンから息子ロレンゾに引き継がれつつあるワイン造りを、名番頭として知られるCEOジョン・ルエル率いるチームが支え、トレフェッセンは新たな時代を迎えています。
インポーターさんから見たトレフェッセンの魅力
長い歴史を持ち、世界的にも評価の高いトレフェッセン。ですが、トレフェッセンの魅力は外側から分かるものだけではありません。今回、実際にトレフェッセンを訪問した経験のあるインポーターさんに隠れた魅力を教えていただきました。
トレフェッセンの魅力は、何と言ってもワイナリーを運営する上での様々な取り組み。一切の妥協も許さないという言葉がまさにぴったり。さぞかし厳しい職場環境なのかと思いきや、働くスタッフさんはみな心が豊かに見えるのです。
CEOのジョン・ルエル氏は、「働くすべてのスタッフが栽培責任者」と語ります。ますます厳しそうに感じますが、これには愛情がたっぷり込められているのです。 トレフェッセンに入社したスタッフは皆、まずワイナリーの売店やテイスティングルームの仕事につきます。トレフェッセンがどのようなワインを造り、また何を目指しているのかを学んでいきながら、たくさんのお客様と接し知識と経験を積んでいきます。
後に、ブドウ畑の仕事を経験します。この時はもちろん畑仕事については素人です。10人一組のチームを組み、8人の経験者と2名の新人スタッフという構成で、ブドウ畑での仕事を学び技術を習得していきます。このようにしてトレフェッセンの技術と精神は伝え続けられているのです。ワイン醸造も含めて、全てのスタッフがワイナリー運営に関わる全ての業務を理解し、一人一人が責任者としての役目を務めあげています。
そして驚きなのは、トレフェッセンで働くスタッフは、全員正社員であること。最も忙しい収穫期であっても、日雇い労働者は雇い入れないそうです。その時点で、収穫されるブドウの品質の高さが想像できます。また、ブドウ畑やワイナリーの環境保護のみならずスタッフの健康も重要と考えています。
敷地内にあるたくさんの果樹園や野菜畑で収穫されたオーガニック食材が分配され、(もちろんワインも!)福利厚生に対しての取り組みにも積極的なんだそう。なんとも羨ましい!
定期的にスタッフ向けのセミナーも行い、スタッフの知識の向上にも努めています。まさに訪問した翌日は土壌セミナーを開催したそう。全てのスタッフにたくさんの経験と知識をもたらす取り組みにも感動です!