フレデリック スティーヴンソンFrederick Stevenson
フレデリック スティーヴンソンは、突如として南オーストラリアのアデレードに販売され始めた謎のワインでした。一体誰がこのワインを作っているのか誰も知らず、そしてどこに醸造所があるかも不明だったのです。
それもその筈フレデリック スティーヴンソンとは仮名であり、その正体はスティーヴン クロフォード。フランスでワイン作りを学んで故郷に戻ったばかりの青年だったからなのです。スティーヴンはワイン作りを始めるに当たり、先ず自身のアイデンティティを全てひた隠しにしました。
スパイダーマンやバットマンの様にエイリアスを作った事には理由があり、自身が望むスタイルを作り続ける事で周囲から敵視されたり、家族が後ろ指を指されるのではないかと考えたのです。ルーシー マルゴーやショブルックのワインが、当時は殆ど流通しておらず、スティーヴンはオーストラリアに於ける自分を異端として捉えていた訳です。
偽名を使用し、複数の無名アーティストをラベルデザイナーに据え、突如としてサンプルボトルをワインショップに送りつける事でビジネスの礎を築いたスティーヴン。つい数ヶ月前迄は無名の存在であり、アデレードの街中にある古ぼけたガレージでワインを作っている事など誰も露知らず。ミステリアスでアンビシャス。インポーターのワインダイヤモンズとの邂逅はまるで運命であったかの様に思えるそうです。