ボンドBond
ボンド早わかりポイント
- 不動産業で成功した男、ウィリアム・ハーランが実現した“ワイン造りの夢”
- ナパ・ヴァレー屈指のカルトワイン“ハーラン・エステート”の兄弟ブランド
- 80以上の畑から25年かけて厳選。5つの最高峰畑だけでワインを造る特別なプロジェクト
- 単一畑スタイルのカベルネで表現するのはナパの“グラン・クリュ”
- 新世界カリフォルニアで親子二代が継ぐ“200年計画”
厳選した5つのブドウ畑の個性を味わうナパ・ヴァレーのグラン・クリュ
ボンドは、ナパ・ヴァレー屈指のカルトワインとして知られる「ハーラン・エステート」を創設したウィリアム・ハーランが、1996年に立ち上げた二つ目のワインブランド。ボンドのワインは、ハーラン・エステートと同じ醸造家によって造られており、名実ともにハーランの“兄弟ブランド”といえる存在です。
では、ハーラン・エステートとボンドは何が違うのか。
ハーラン・エステートが一つの偉大なエステートをボルドー・ブレンドで表現する「ボルドー方式」であるのに対し、ボンドはナパ・ヴァレー中から選び抜いた5つの優れた畑の個性を、カベルネ・ソーヴィニヨンの単一品種で表現する「ブルゴーニュ方式」を採用しています。
ボンドのワインを生む5つの畑は、25年もの歳月をかけて、80以上の畑から慎重に選び抜かれたもの。これらの畑から生み出されるワインは、それぞれの土地の個性を際立たせる“シングル・ヴィンヤード”の哲学を体現しています。
ブランド名“BOND”は、創業者ウィリアム・ハーランの母の旧姓に由来。ワインラベルは19世紀の銀行証券を現代風にアレンジしたもので、女神のロゴには3つの言葉FRIENDSHIP, CHARACTER, TRUST が描かれています。
ワイナリーは「200年計画」を掲げ、世代を超えて価値を積み重ねていくことを理念としています。2021年には、ウィリアム・ハーランの息子であるウィル・ハーランが経営を引き継ぎ、次世代への歩みが本格的に始まりました。
また造り手の継承も進んでいます。長年ボンドを支えてきたワインメーカー、ボブ・レヴィは現在は統括ディレクターとして全体を見守り、2010年からはボブ・レヴィーの下で薫陶を受けたコーリー・エンプティングがワインメーカーとして醸造の中心を担っています。親子二代のビジョンと、世代を超えて受け継がれる醸造チームの技術が、ブランドの未来を形づくっています。
“不動産とワイン”二つの成功を収めた男
創業者のウィリアム・ハーランがワインを“職業”とするまでには、非常に多様で冒険的な道のりがありました。
若い頃からの“ワインとの縁”
ウィリアム・ハーランがワインに興味を持ち始めたのは、カリフォルニア大学在学中の1950年代。この頃のナパは、禁酒法を生き延びたワイナリーがいくつかあるだけの静かな場所でした。彼は、何度かナパを訪れ、提供されるワインをテイスティングするうちに、“いつの日か自身のワイナリーを持ちたい”という夢を抱くようになったといいます。
型破りなキャリアと不動産での成功
ワインへの興味はあった一方で、ウィリアム・ハーランの人生の前半、青年期に進んだキャリアは“ワイン造り”とはかけ離れたものでした。
大学卒業後の彼は、世界を旅する冒険家でした。海洋調査船の船員や、ポーカープレイヤーだったこともあるといいます。
そんな彼が、大成功を収めたのが1970年代に始めた不動産業。1975年にビジネスパートナーと共にパシフィック・ユニオン・ランド・カンパニーを設立し、サンフランシスコ・ベイエリアで大きな成功を収めます。彼の不動産における成功が、後に資金面で彼が抱くワイン造りの夢を支えることになりました。
不動産からワイン業界へ
彼がワインの世界に踏み込んだきっかけは、不動産事業が導いたものでした。
1979年。ナパヴァレー内にある経営難のカントリークラブ「メドウッド」を購入してホテルリゾートの経営をはじめたことがきっかけでした。のちに、この場所では第一回“ナパバレー・ワイン・オークション”を開催することになるのですが、このオークションを始めるようウィリアムを説得したのが、カリフォルニアワインの父ロバート・モンダヴィだったといいます。
1980年、ナパ・ヴァレー・ワイン・オークションの参考のため、ウィリアム・ハーランはロバート・モンダヴィらとフランスへの研修旅行に出かけます。ブルゴーニュで有名なオークション“オスピス・ド・ボーヌ”やブルゴーニュグラン・クリュ生産者、ボルドーの1級シャトーを巡りました。
このツアーでシャトーを視察し、何世代にもわたってドメーヌを受け継いできた家族と出会い、畑の個性の違いを引き出す様を目の当たりにしたウィリアムは、深い感銘を受け「200年計画」という壮大なビジョンを掲げ、ナパ・バレーに代々受け継がれるワイン造りのドメーヌを創設することを決意しました。
“200年計画”を胸に、ワイン造りの世界へ
ヨーロッパでの確信を経て、ハーラン氏は本格的にワイン造りに参入します。
1983年、彼はメリーヴェイルを共同出資というかたちで設立。ここで、後にハーラン・ファミリーのワイン造りを支えることになるワインメーカー、ボブ・レヴィと共に仕事を始めました。
その一方で、ハーランは自身の“200年計画”を具現化するプロジェクトとして、1984年にハーラン・エステートの構想をスタートさせます。ナパ・ヴァレーで「ボルドーのグラン・ヴァン」に匹敵するワインをつくるという壮大な挑戦でした。
10年のリサーチの結果、最上のワインは斜面から生まれることに着目し、オークヴィルの森林を購入・開墾・植樹し、ボルドーが数世紀かけて作り上げたボルドーのグラン・ヴァンのクォリティを20年足らずでハーラン・エステートとして造り上げました。
やがてメリーヴェイルを手放すことになりますが、このブランドで多様な畑を扱った経験から、ナパに点在する畑の中に、際立った個性を持つ区画が存在することに気づきます。「畑ごとのテロワールを純粋に表現する」という新たなビジョンが芽生えたのです。これが後のボンドにつながっていきます。
1996年、「最高の畑を見極め、それぞれの個性を個別のワインとして表現する」ことを目的としたブランド「ボンド」を設立。初ヴィンテージの1999年には、厳選された2つの畑から生まれたメルバリーとヴァシーナがリリースされます。
その後も、80以上の候補地から時間をかけて畑を選び抜き、現在では5つの“クリュ”がボンドを構成。現在でも6番目のクリュを探し続けているといいます。
さらにハーランはその後も、より広いヴィジョンをもってプロモントリー、マスコットといった異なるコンセプトのブランドを立ち上げ、ナパ・ヴァレーにおける“ウィリアム・ハーランの世界”をより豊かに広げています。
ブドウ栽培へのこだわり
ボンドのワイン造りは、人間と土地の対話を重視する独自の哲学に基づいています。ボンドでは、ブドウ栽培を単なる農業ではなく、まるで「庭仕事」のように丁寧に扱っています。ボンドの精神は、単なる技術的な側面だけでなく、ワイン造りに関わる全ての人々の情熱と献身に支えられています。ブドウ樹と深く向き合い、自然の力を引き出すことで、畑の個性を最大限に表現することを目指しています。
ブルゴーニュに倣い丘陵地から厳選した5つの畑
かつてブルゴーニュへの視察研修で得た学びを活かし、ボンドで使用するブドウ畑はナパ・バレーの斜面という立地。四半世紀にわたりワインメーカーのボブ・レヴィ、支配人のドン・ウィーバーとともに、ナパ全域を巡って理想の畑を探し求めた特別な畑です。
テロワールの個性を生かす
ボンドのワインはすべてカベルネ・ソーヴィニヨン100%ですが、畑ごとに味わいが全く異なります。これは、各畑の個性を最大限に尊重し、その個性をワインに表現するためです。
ブドウ栽培への深い知識を持ったフルタイムチーム
畑の作業にあたるスタッフは季節雇用ではなく、フルタイム。 独自の「ワインマスター」プログラムを通じて専門知識を深め、修了後には1.5ヘクタールの畑を任され、栽培の決定権を持つことができます。ブドウ樹の一つひとつを理解する“職人”を育てる体制です。
自然農法への取り組み
畑では耕起を行わず、畝間には多様な植物を植えて生態系を保つ。肥料・農薬は使わず、灌漑を行わないドライファーミングに挑戦するなど、自然の力をできる限り引き出す栽培を貫いています。
ボンド各ワインの特徴
ボルドーに例えると右岸、ポムロールやサンテミリオン。シャトー・ペトリュスの豪さを持つ
- 初ヴィンテージ:1999年
- 名前の由来:この土地のオーナーが長年暮らしたロンドンの歴史的名所の並木道。
- 畑の特徴:【面積】2.8ha、【標高】106~159m、ラザフォード東側の丘陵地、ヘネシー湖の北側。東向き・南東向き斜面。堅い粘土質岩盤の上に、古い時代の堆積土壌が積もり、石ころが混じる。
ボルドーに例えると圧倒的で華麗なるシャトー・ラフィット・ロートシルト
- 初ヴィンテージ:1999年
- 名前の由来:ボンド・ワイナリーのすぐ南東に位置するため、スペイン語で「隣人」を意味するヴァシィーナと命名。
- 畑の特徴:【面積】4.45ha、【標高】67-101m、美しい段々畑でオークヴィルの西の麓に位置し、朝日を享受する東向き斜面。堅い岩盤の上に小石や粗い砂が混じる川が堆積物を運んで積み重なった土壌。
ボルドーに例えると、シャトー・ムートン・ロートシルトの果実の凝縮感としなやかさ
- 初ヴィンテージ:2001年
- 名前の由来:「エデン」は19世紀の古地図に登場する歴史的な地名に由来
- 畑の特徴:【面積】4.45ha、【標高】44~57m。オークヴィルの谷底近くのなだらかな北向き斜面。岩だらけの円丘にある美しい畑。鉄分が多く含まれる赤い破砕火山岩の土壌、沖積土壌。
ボルドーに例えると、シャトー・ラトゥールの力強さと複雑さを持つ
- 初ヴィンテージ:2003年
- 名前の由来:名前はラテン語の「とてもたくさん」という意味。
- 畑の特徴:【面積】2.8ha、【標高】:347-404m、ナパ・ヴァレーの北西スプリング・マウンテンの壮大なスロープに位置し、針葉樹林に囲まれた北東向きの急斜面。火山灰堆積土壌。5つの畑の中で標高が一番高い為、収穫はいつもプルリバスが最後となる。
ボルドーに例えるとペサック・レオニャンのグラーヴ(小石のある川床) シャトー・オー・ブリオンの薫り高さと品格
- 初ヴィンテージ:2006年
- 名前の由来:ドイツ語で「純粋な源」という言葉に由来。
- 畑の特徴:【面積】3.6ha、【標高】:132~181m、ナパ・ヴァレーの中心を見下ろす東向きの丘陵地に位置するクエラは、かつて川が流れていた土地。南西向き急斜面。古い河床が隆起し、火山灰が固まったトゥーファと呼ばれる岩や小石が混じる土壌。
日本とアメリカでのみ取り扱われるボンドのセカンド。複数の畑のブドウをブレンドしたマルチ・ヴィンヤーズのキュヴェ。
- 初ヴィンテージ:1999年
- 名前の由来:メイトリアークは「一族を導く女性」の意味。
- 単一畑シリーズに使用しなかったキュヴェを厳選し、親しみやすい味わいに仕上げています。畑をブレンドすることで、ナパ・ヴァレーのヒルサイドの個性を凝縮し、ヴィンテージごとの特徴をストレートに表現しています。
DATE: 2025.9.12
ボンド支配人
マックス・カースト氏をゲストに迎え、
姉妹店ワインサロン・スープルのスペシャル・ワイン会を開催。
日本料理の名店「老松 喜多川」にて、出汁の旨みとボンドのワインが織りなす日本ならではのマリアージュをご堪能いただきました。カースト氏も「カベルネが割烹料理にこれほど合うとは」と感動されていました。





