パルメイヤーPahlmeyer
パルメイヤーの早わかりポイント
- 元弁護士が目指したカリフォルニアのシャトー・ムートン
- ナパを築き上げた錚々たる顔ぶれの歴代ワインメーカー
- 1986年、初ヴィンテージの赤ワインがいきなりロバート・パーカー94点の快挙
- シャルドネがデミ・ムーア主演映画“ディスクロージャー”の重要アイテムに採用され人気は加速
- 過去の栄光じゃない!現醸造家ケイティ・ヴォートはパルメイヤー史上2度目の100点満点を獲得!
弁護士のキャリアを捨て“カリフォルニアのムートン”を夢見た男
パルメイヤーは、元弁護士のジェイソン・パルメイヤーがナパで創業した伝説的なワイナリー。
“カリフォルニアでシャトー・ムートンを造る”という壮大な夢を掲げて立ち上げたパルメイヤーは、初ヴィンテージの赤ワインでいきなり高得点を獲得!さらにパルメイヤーのシャルドネが、1994年に映画『ディスクロージャー』作中の重要アイテムに採用されたことで知名度はさらに急上昇。ワインの名前だけでなく、ナパのシャルドネらしい厚みのある味わいが評判を呼び、世界的に人気が高まりました。
パルメイヤーが手掛けるのは、初リリース以来ワイナリーの看板とも言える赤ワイン“プロプライエタリー・レッド”を有するパルメイヤー・シリーズ、リリース直後から楽しめる親しみやすいスタイルのジェイソン・シリーズ、良年のみ極少量リリースされる限定生産のレ・ゼリュシリーズの3シリーズ。
かつてはソノマの自社畑、ウェイフェアラー・ヴィンヤードを使ったシャルドネやピノノワールも手掛けていましたが、現在は別ブランドとして独立しています。
2019年、パルメイヤーは世界最大級のワイン企業であるE. & J. ガロ社の傘下へ。
同年より新たにパルメイヤーのワインメーカーに就任したケイティ・ヴォートが手掛けた、“レゾン・デートル 2021”がパルメイヤー史上2度目の100点を獲得するなど、ワイナリーはさらなる進化を続けています。
パルメイヤーの歴史
パルメイヤーの物語は、一人の男の一切の妥協を許さない大胆な夢から始まりました。
創業者のジェイソン・パルメイヤーは、サンフランシスコ州立大学で経済学を学んだ後、ゴールデンゲート大学のロースクールに進みます。ジェイソンは、そこで運命を変える出会いを果たします。それは、ロースクールのワインテイスティング・グループでした。ワインの奥深さに魅了された彼は、勉強のプレッシャーを忘れるほど情熱を注ぎ込むようになりました。
ジェイソンはロースクール卒業後、連邦政府の裁判弁護士を経て、故郷オークランドで弁護士事務所を構えましたが、彼の頭の中はすでに法律ではなくワインで埋まりつつありました。そして、ジェイソンの“カリフォルニアのシャトー・ムートン”とでも言うような、豊かで力強いボルドーブレンドをナパ・ヴァレーで生み出し、人々を圧倒させるという、無謀な挑戦が始まったのです。
スーツケース・クローン輸送作戦
ジェイソンは友人ジョン・コールドウェルと共に最高の苗木を探すため、ボルドーを訪れます。現地のボルドー大学教授からは、土地の分析データを見た上で「トウモロコシでも植えていろ」と一蹴されましたが、彼らは決して諦めませんでした。
3年の歳月をかけて、最も凝縮感があり風味豊かなカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド、マルベックの5品種の理想的な苗木を特定し、カナダを経由して秘密裏に米国内へと持ち込みました。これらは、手荷物に忍ばせて運ばれたことから後に「スーツケース・クローン」と呼ばれるようになります。
この極秘プロジェクトは順調に進んでいましたが、カナダからアメリカへの最後のトラック輸送の際、ついに国境当局によって苗木が発見されてしまいます。すべての持ち込み品を没収するよう命じられ、まさに絶体絶命。しかし、ここで彼らは驚くべき機転を利かせます。本物であるフランス産の苗木を隠し通し、代わりにカリフォルニア大学デイヴィス校であらかじめ購入しておいた別の苗木を差し出すことで、パトロール隊の目を欺くことに成功したのです。
こうして守り抜かれた伝説のクローンが、パルメイヤーの「カリフォルニア・ムートン」という夢を叶えるための、かけがえのない礎となりました。
この苗木は1981年、コールドウェル家がクームズヴィルに所有する55エーカーの土地に植えました。ブドウは通常、3年もすれば実を結ぶようになりますが、険しい急斜面や岩が点在するこの土地で、最初の商業収穫に至るにはさらに6年の歳月を要しました。
彗星のようなデビューとハリウッドでの脚光
1986年に初収穫を迎えると、ナパにおけるワイン造りの指導者でもあったランディ・ダンが、果実の凝縮感と複雑さに惚れ込み、ブドウをすべて買い取りたいと申し出ました。この時、ジェイソンは一つの条件を出しました。それは、果実を譲る代わりに、ランディ自身の手でパルメイヤーのボルドーブレンドを造ること。
かくして、初リリースのパルメイヤー プロプライエタリー・レッド1986は、世界で最も影響力のある評論家ロバート・パーカーから94点という驚異的なスコアを叩き出し彗星の如きデビューとなったのです。ランディ・ダンは1993年までパルメイヤーの醸造を手掛け、無濾過醸造の手法で、パルメイヤーのボルドーブレンドを本格的な存在へと押し上げました。
勢いに乗るパルメイヤーは、1989年に次なる挑戦としてシャルドネの生産を開始します。ジェイソンが白羽の矢を立てたのは、後にハーラン・エステートでワインメーカーを務めるボブ・レヴィでした。ボブは「低収量へのこだわり」「厳しい果実選別」「セラーでの介入を最小限に抑える」という彼独自の哲学をパルメイヤーに持ち込み、ブランドにさらなる洗練をもたらしました。
そして1994年、ボブが手掛けた1991年ヴィンテージのシャルドネが、マイケル・ダグラスとデミ・ムーア主演のハリウッド映画『ディスクロージャー』に登場したことで、その名声は決定的なものとなります。映画の中で重要な役割を果たしたこのワインには、注文が殺到。もともと希少だったワインは、世界中のワイン愛好家が垂涎する「カルト的な地位」を確立したのです。
“ジェイソン”の誕生
1993年、ジェイソン・パルメイヤーの下にナパ・ヴァレーのワイン史を象徴する3人のスター醸造家が集結しました。ヘレン・ターリー、ボブ・レヴィ、そしてランディ・ダンです。彼らが1992年ヴィンテージのロットを評価していた際、「パルメイヤー」としてリリースするのに完璧なロットがある一方で、もう少し親しみやすく穏やかなロットが幾つかあることに気付きました。
そして、パルメイヤーを継ぎながらも、よりしなやかで、リリース直後から楽しめる親しみやすいこのワインは“ジェイソン(Jayson by Pahlmeyer)”としてリリースすることに。
当初は、ボルドーのセカンド・ワインと似たコンセプトだったこのシリーズは、独自のブランドへと進化。パルメイヤーより新樽比率が低く、より軽く明るく柔らかく親しみやすいワインとして支持されています。
理想の果実を求め、自社畑の開拓
1990年代後半、パルメイヤーはさらなる品質の向上を目指し、ブドウ栽培のすべてをコントロールできる自社畑の取得に乗り出します。
当時コンサルタントを務めていたヘレン・ターリーは、「第一級シャトーを目指すなら、自社畑を持つべき」とジェイソンに提案。そして見出したのは、アトラス・ピークの最南端、標高450~640mに位置する「ウォーターズ・ランチ」でした。
サンフランシスコの街並みまで見渡せるほど標高が高く、荒涼とした岩だらけの地を、ヘレンは「楽園のような場所」と絶賛。1998年には、栽培界のレジェンド、デヴィッド・エイブリューによってボルドー品種とシャルドネを植樹。この厳しい環境の山岳畑こそが、パルメイヤーのワインに圧倒的な凝縮感と複雑な深みをもたらす源泉となったのです。
ガロ・ファミリーへの継承とこれから
2019年、パルメイヤーは世界最大のワイングループの一つであるE. & J. ガロの傘下に入り、新たな時代を迎えました。この買収に際し、創業者ジェイソンは「ガロの品質に対する長年のコミットメントが、パルメイヤーをさらに発展させると信じている」と語っています。
現在、その伝統のバトンは新世代の醸造家ケイティ・ヴォートに託されています。彼女は「決して妥協しない」という哲学を継承しつつ、パルメイヤーをさらにダイナミックな存在へと進化させています。その実力は、2021年ヴィンテージの“パルメイヤー・メルロー”がジェームス・サックリングの米国ワインTOP100で1位に、また同年の“レゾン・デートル”がパルメイヤー史上2度目となる100点満点を獲得したことでも証明されました。
40年以上の歴史を経て、パルメイヤーは今、その「魂」を失うことなく、かつてない高みへと登り続けています。
錚々たる顔ぶれの歴代ワインメーカー
パルメイヤーのワイン造りは、創業当初から今日に至るまで、ナパ・ヴァレーのワイン史を彩る「錚々たる顔ぶれ」の醸造家たちの手によって磨き上げられてきました。
初リリースから高得点を獲得し、ノン・フィルター製法を確立したランディ・ダンに始まり、低収量と最小限の介入によるシャルドネを造り上げたボブ・レヴィ、そして自社畑の開拓や革新的技術で世界的な名声を不動のものにしたヘレン・ターリー。
ターリーの愛弟子エリン・グリーンは、世界最高峰のブレンディング専門家ミシェル・ロランと共に緻密なブレンド技術を極め、その後もケール・アンダーソン、ビビアナ・ゴンザレス・レーヴ、ジェニファー・ウィリアムスといった卓越した才能がその歴史を繋いできました。
そして現在。伝統を尊重しながら「鮮やかな酸」という独自の感性を融合させたケイティ・ヴォートが、史上2度目の100点満点を獲得し、パルメイヤーブランドをかつてない高みへと導いています。
パルメイヤーで使用するブドウについて
パルメイヤーのワインは、厳しい自然環境と丁寧な栽培方法によって育まれた山岳地帯のブドウを使用しているのが特徴。主にナパ東側に連なるヴァカ山脈の丘陵や尾根といった標高の高い山岳エリアに広がる、評判のヴィンヤードからブドウの供給を受けています。
ブドウの果実は、この地域の標高の高さや、日照、土壌などの条件によって、小粒で凝縮感が高く、しっかりとした骨格と豊かな風味を備えています。このブドウがパルメイヤーのワインに味わいに深みと個性をもたらすのです。
また、最高のワインを造るため、ブドウ畑においても、緻密に計算した作業を行っているそう。
ブドウのポテンシャルを極限まで引き出し、収穫時には厳しく選果。こうして選び抜かれた果実から、バランスの良さと力強さを兼ね備えたワインが生まれるのです。
主なブドウ畑
- Antica Estate
ヴァカ山脈を構成する尾根のひとつアトラス・ピークの麓の谷に位置するブドウ畑。この谷には定期的に霧が立ち込め、暖かい日の後には涼しい夜が訪れます。シャルドネ栽培に理想的なこの地で、アンティカは長年にわたりパルメイヤー・シャルドネのポートフォリオの一部となっています。
標高:1400~1800フィート(約420~550m) - Stagecoach Vineyard
アンティカと同様、アトラス・ピークにある畑で2017年からはガロ社が所有。土壌の大部分は岩という、極限まで厳しい山岳地域に位置する畑。この岩だらけの荒々しい土壌が日中の熱を蓄え、夜間に放射するため、パルメイヤーが扱う畑の中でも比較的温暖な場所。この厳しい環境下ではステージコーチならではの濃厚な味わいを持つ小さな房のブドウが実ります。
標高:1100~1750フィート(約335~533m) - Upper Range
銘醸地ラザフォードをヴァカ山脈から見下ろす尾根沿いに位置する、他に例を見ないブドウ畑。山岳地帯ならではの試みとして、ブドウの成熟期に太陽が樹冠の真上を直射するように、列の向きが綿密に設計されています。これにより、従来の午前中や午後の日照不足を解消しています。ここで収穫された果実は、深みのある複雑さと、力強く熟成したタンニンをもたらします。
標高:500~700フィート(約150~210m) - Vangone
アトラス・ピーク内、ステージコーチ・ヴィンヤードの真向かいでレクター貯水池を見下ろす場所にあります。アッパー・レンジと同様、ブドウの栽培が厳しい山岳地帯。強い日差しから果実を保護するため、樹冠をV字型に形成しています。パルメイヤーのカベルネ・ソーヴィニヨンの中でも際立った存在で、濃厚なカシス、熟したプラム、そしてザラつきのあるタンニンが特徴です。
標高:800~1000フィート(約240~300m) - Waters Ranch
ウォーターズ・ランチはアトラス・ピークの最南端にあり、現在も創業者ジェイソン・パルメイヤーが所有する畑。ブドウ畑は2つの区画に分かれており、標高の低い東向きのフェーズ1はウッデン・バレーを見下ろし、標高の高い西向きのフェーズ2はナパ・バレーを見下ろしています。土壌は、山岳地帯としては比較的深く、十分な保水力と力強い樹冠を育んでいます。ウォーターズ・ランチ産のブドウは、ワインに複雑さ、深み、そしてしっかりとしたタンニンをもたらす、風味豊かな味わいが特徴です。
標高:1500~2100フィート(約450~640m)
パルメイヤーにおけるワイン造り
パルメイヤーでのワイン造りは、創業者ジェイソン・パルメイヤーが目指した“ボルドー第一級シャトー”の原則『テロワール』『規律』『品質』にこだわり、ナパ・ヴァレーの山岳部のブドウがもたらす豊かさ、力強さ、深みを融合させることを基本としています。
ブドウはすべて手作業で収穫され、それぞれの区画ごとに最も熟したタイミングを見極めて摘み取られます。果実の鮮度を保つため、収穫はまだ気温の低い早朝に行われます。その後、ブドウは手作業および光学選別によって厳密に選別。ブドウに負担をかけないよう重力を利用してタンクへと移され、やさしく発酵・抽出が進められます。
熟成にはタランソー社およびフランソワ・フレール社の高品質なオーク樽が用いられ、厳選されたロットは一度ブレンドされた後、再び樽で熟成。力強さと繊細さを兼ね備えたバランスの良い味わいが生まれます。さらに時間をかけて熟成させることで、複雑さと深みが増し、長期熟成にも耐えるワインへと仕上がります。
瓶詰め作業では、清澄やろ過を行いません。これは、土地の個性をありのままに表現するため。
こうして完成するパルメイヤーのワインは、豊かで凝縮感がありながらもエレガント。人々を惹きつけて止まないワインとなるのです。
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