ロキオリ ヴィンヤード&ワイナリーRochioli Vineyards & Wineny
ロキオリの早わかりポイント
- ロシアン・リヴァー・ヴァレーの象徴とも言えるピノノワール生産者!
- ウィリアムズ・セリエムがカルト・ピノの座に就くきっかけとなった一流ブドウ農家
- 初ヴィンテージのピノノワールが“The Best of American Pinot Noir”に選出
- カリフォルニアで最も樹齢の古いソーヴィニヨンブラン畑も所有
- ブルゴーニュを手本とした「余計な手を加えない」ワイン造り
パイオニアが表現するロシアン・リヴァー・ヴァレーのテロワール
ロキオリ・ヴィンヤーズは、カリフォルニア/ソノマのロシアン・リヴァー・ヴァレーを象徴するピノノワールの生産者。ヒールズバーグの南西に50ヘクタール以上のブドウ畑を所有しています。
ロキオリはワイン生産者であり、4代に渡るブドウ栽培農家でもあります。
収穫したブドウの半分はロキオリでのワイン造りに使用し、残りをウィリアムズ・セリエムやギャリーファレル、レイミーといった一流生産者に供給し、人気を博しています。
ロキオリが栽培するブドウは、その品質の高さから購入を希望するワイナリーも多く、ブドウ購入のための順番待ちリストまであるとか。
ロキオリ自身のワインを初リリースしたのは1985年。リリースと同時にワインスペクテイター誌から“The Best of American Pinot Noir”の栄誉に選ばれました。
ロキオリでは、ブドウ栽培にとことんこだわります。一方、醸造の過程では十分に上質のブドウを使うため、極力人の手は加えません。こういったワイン造りがロシアン・リヴァー・ヴァレーのテロワールを表現した『絹のように滑らかで果実味豊かなピノノワール』や『リッチで豊満なシャルドネ』、『酸味が効いて食事に合うソーヴィニヨンブラン』を造り出しているのです。
4世代80年以上に及ぶロキオリ・ヴィンヤーズの歴史
豪華な邸宅が立ち並ぶナパ・ヴァレーとは違い、ソノマではかつて、貧しい移民の家族が農家として働き、その傍らでワイン造りを行ってきました。
ロキオリ・ヴィンヤーズの歴史は、そんなソノマの農業の歴史を象徴する物語です。
すべての始まり1世代目ジョー・ロキオリ・シニア
ロキオリ・ファミリーとして最初にこの地に根ざしたジョー・ロキオリ・シニアは、1911年に両親とともにイタリアの小さな村からアメリカにやってきた移民でした。
彼らは、多くのイタリア人家族と同じように、アメリカ中を旅して北カリフォルニアに定住しました。
ジョー・ロキオリ・シニアは、当時10歳ながらもロシアン・リヴァー・ヴァレーの農場で父親と一緒に働いていたといいます。
1920年、ジョー・ロキオリ・シニアは農場長になります。しかし、いつか自身の土地を持ちたいという大きな夢を持ち続けていました。
そして1930年代、ジョー・ロキオリ・ジュニアの誕生直後に引っ越したフェントン・エーカーズという土地を、こつこつ買い進めていきました。一度に購入するのは一区画ずつでしたが、その土地はいつしか約50ヘクタールの大きさになりました。
この場所が、現在のロキオリ ヴィンヤーズとなるのです。
2代目はブドウ栽培のパイオニア、ジョー・ロキオリ・ジュニア
ジョー・ロキオリ・ジュニアも父ジョー・シニアと同じく、幼い頃から農作業に従事し、毎日学校へ行く前後は農場で働いてました。
当時、ここで作られていたのは多くが、ホップ、インゲン豆、プルーンといった農作物でした。
ブドウもごく一部栽培していましたが、ジャグワインと呼ばれる安価なテーブルワイン用のブドウ品種のみ。フレンチコロンバール、アーリーブルゴーニュ(アヴリュー)、ヴァルディギエ(ナパ・ガメイ)などのブドウを栽培して、ガロ社などに販売していました。
そんな中でも、ジョー・ロキオリ・ジュニアは『ロシアン・リヴァー・ヴァレーはいつか世界最高のブドウとワインを生み出す特別な土壌である』と確信していました。
父ジョー・シニアからブドウ栽培を引き継ぎ、栽培する品種を増やしたいと考えていたジョー・ロキオリ・ジュニア。1959年、ついに父を説得してカベルネソーヴィニヨンとソーヴィニヨンブランを植えることになりました。
残念ながら、カベルネソーヴィニヨンは生育が悪く、1970年代に引き抜かれてしまいましたが、今でも最初に植樹したソーヴィニヨンブランの樹は現存しており、カリフォルニアで最も古いソーヴィニヨンブランのブドウの一つとされています。
ジョー・ロキオリ・ジュニアはこの時、ワインの研究で有名なカリフォルニア大学デービス校を訪れ、特に気に入った畝から穂木を選んだといいます。
当時、ソーヴィニヨンブランは主にブレンドワインに使用されるようなあまり人気のない品種でした。しかし、ロキオリのソーヴィニヨンブランは、高品質のブドウとして次第に注目を集め、頻繁に高評価を得る人気ワインとなっていきました。
質の高いブドウを手掛けたいというジョー・ロキオリ・ジュニアの情熱はさらに高まります。
1968年、ソーヴィニヨンブラン以外の残りのブドウの樹を全て引き抜き、ピノノワールを植えたのです。ピノノワールの穂木は、セントヘレナの南にあるフランス産のクローンを譲ってもらいました。
当時、ロシアン・リヴァー・ヴァレーではまだピノノワール栽培はあまり知られておらず、この取り組みはある種の挑戦でした。しかし、ジョー・ロキオリ・ジュニアには以前に読んだブルゴーニュについての文献や自身が持つ独自のアイデアがありました。シャルドネもこの後すぐに植樹されています。
最高のブドウを育てるために、毎日続いた早朝からの労働はやがて報われます。
1973年、同じくロシアン・リヴァー・ヴァレーのパイオニアであるデイビス・バイナムがロキオリから供給されたピノノワールを使いワインをリリース。そのブドウの質の高さに敬意を評し、ワインラベルには“ロキオリ”の名と“ロシアン・リヴァー・ヴァレー”の産地が記名されたのです。
単一畑を記名したワインは、ロシアン・リヴァー・ヴァレーで初めてのこと。ロシアン・リヴァー・ヴァレーがAVA(アメリカ政府が認定するブドウの栽培地域分類)になる10年も前のことでした。
ロキオリに注目していたのは、デイビス・バイナムだけではありません。
趣味のワイン造りからスタートしたウィリアムズ・セリエムがロキオリのピノノワールでワインをリリース。1987年、カリフォルニア・ステート・フェア・ワインコンペティションに初出品すると、1985 ウィリアムズ・セリエム ロキオリ・ピノノワールが赤ワインの最高賞に選出されたのです。
ウィリアムズ・セリエムがカルト的人気を誇るきっかけになっただけでなく、ロキオリの名も一躍有名にしていきました。
ロキオリのワインを生んだ3世代目トム・ロキオリ そして次の世代へ
ロキオリ・ファミリーは、ブドウを販売する傍ら、フェントン・エーカーズのラベルでワインを生産するようになっていました。
1980年代初頭、大学を卒業して大手金融機関に勤めていたジョー・ジュニアの息子、トム・ロキオリは新しいアイデアとともに畑へと戻ってきます。それは、『ロキオリの名前を冠したワインを自分たちの手で作る』というものでした。
自分たちの育てるブドウは素晴らしく、ワインもとても品質が高いという自信があったのです。
熟考の末、父ジョー・ロキオリ・ジュニアはこの意見に同意。1983年、ロキオリ・ヴィンヤーズが誕生し、そのすぐ後にトム・ロキオリが経営と醸造を担うことになりました。
1987年、1985ヴィンテージのロキオリ・ピノノワールが初リリースされると、すぐさまワイン・スペクテイター誌が“The Best of American Pinot Noir” に選出。
トム・ロキオリは、自分たちが想定した以上に早く評価されたことに対して、驚いたといいます。
一躍注目の的となったトム・ロキオリは、その後ブルゴーニュへの旅で訪れた生産者に感銘を受けます。ブルゴーニュでの畑ごと、区画ごとに異なるキャラクターを引き出すワイン造りは、トム・ロキオリのワイン造りの礎となりました。
現在も非常に高い人気を誇るロキオリのワインは常に品切れでワイナリーのテイスティングルームでさえ飲めない場合もあるとか。
そして、ロキオリ・ヴィンヤーズは第4世代へ。2023年5月、トム・ロキオリの娘レイチェル・ロキオリはジェネラルマネージャーに、そして息子ライアン・ロキオリがアシスタント・ワインメーカーに就任するとアナウンスがありました。
新しい風が吹き込んだロキオリ・ファミリーは、これからも素晴らしいワインが造り続けられることでしょう。
ロキオリでのこだわりあるワイン造り
ロキオリにとってブドウ畑は全て
ロキオリのブドウ畑は、ロシアン・リヴァー・ヴァレーの中でも非常に多様性のある地域。ロキオリでは、素晴らしいブドウの栽培には、多様性のある土壌、海に近い立地、朝霧や夜の涼しい風を受ける谷の傾斜が重要なキーだと考えています。
ロキオリにとって、これまでもこれからもブドウ畑がすべてです。
ジョー・ロキオリ・ジュニアはブドウ栽培に長けていました。様々なブドウのクローンの植樹、より高品質のブドウを収穫するための間引き、そしてブドウの房に当たる日光を管理するための葉の間引きといった、たくさんの技術を開拓してきました。
現在、ロキオリのブドウ畑は、個性に応じ分割した区画に分けられています。
トム・ロキオリは『もしカリフォルニアのブドウ畑にグラン・クリュの評価があるのであれば、ロキオリの畑こそがその価値に値する』と語っています。
醸造では余計な手を加えません
ワインメーカーのトム・ロキオリは、天然酵母の使用、畑の区画ごとに分けた発酵、上質な澱ともに熟成、樽熟成後のブレンド、清澄化やフィルタリングを避けるなどブルゴーニュの手法に倣った醸造を行っています。
ブルゴーニュにおける伝統的なワイン造りのアプローチ同様、ワイン造りのプロセスにほとんど手を加えません。
ロキオリの畑で育てた自慢のブドウをベースに、テロワールを重視したワイン造りを行っているのです。