フリーマンFreeman
フリーマンの早わかりポイント
- カリフォルニアでワイナリーと畑を所有する唯一の日本人女性醸造家アキコさん
- 2015年、安倍総理を招いたホワイトハウス公式晩餐会で提供され一躍脚光を浴びる
- 濃厚ワイン全盛の時代から一貫して造るエレガントなピノ&シャルドネ
日本人女性醸造家アキコさんが表現する冷涼なソノマの美しさ
フリーマンは、カリフォルニア州のソノマ・コースト西端にケン&アキコ・フリーマン夫妻が設立した家族経営のワイナリー。
2001年の創設以来、ソノマ・コーストの中でも特に冷涼なこの地域の気候を活かした、エレガントでバランスの取れたピノノワールとシャルドネを生み出しています。
ワインメーカーを務めるのは妻のアキコさん。アキコさんの洞察力と磨き抜かれた味覚により、フリーマンは冷涼気候で造るニューワールドワインのベンチマークのひとつとなり、アキコさん自身もまた才能溢れるワインメーカーとして知られる存在となっています。
2011年1月のブルームバーグ・ビジネスウィーク誌では、
"今まで試飲したソノマのピノの中で最もブルゴーニュのスタイルに近く、コート・ドールに似たベルベットのようなリッチさがある。もし人生で一度もピノノワールを味わったことがないのなら、これこそが本来の味わいです。"
と紹介。
また2015年には、オバマ前大統領が安倍首相を招いて行われたホワイトハウス公式晩餐会で、涼風シャルドネが振る舞われ、そのエレガントな味わいで一躍脚光を浴びました。
2022年5月に正式なAVAとして認められた「ウエスト・ソノマ・コーストAVA」の発起ワイナリーのひとつ。フリーマンは、認定に向けて2011年から活動してきました。
ペイ、オクシデンタル、ジョセフ・フェルプス、リトライ、ハーシュと並び、このAVA内にワイナリーと自社畑との両方を持つ数少ないワイナリーとして、ウエストソノマコーストのピュアで洗練されたワインの魅力を発信しています。
エレガントなワインを愛するフリーマン夫妻がたどり着いたソノマの地
フリーマンを創設したケン&アキコ夫妻はどちらも最初からワインに携わる仕事をしていたわけではありません。
ケン・フリーマンは、ニューヨーク出身。ワイン好き家族の下で育ちましたが、ワインとは無関係の仕事(アジアでのディスカバリー チャンネルの設立メンバーやCNETの事業開発を担当)に従事していました。
一方のアキコさんは日本の東京生まれ。交換留学生としてアメリカに渡り、スタンフォード大学でイタリア・ルネッサンス美術史を学びました。アキコさんもまた、祖父や父の影響でワインを嗜み、特にブルゴーニュのピノノワールとシャルドネの美しさに魅了されていたといいます。
夫妻は共に、エレガントで洗練されたシャルドネとピノノワール好きとして、いつかはカリフォルニアでブルゴーニュのような複雑味と、飲み手を惹き込む力を持ったワインを自分達の手で造りたい、と夢見ていました。
そんなケン&アキコ・フリーマン夫妻がワイナリーの拠点を探し始めたのは1997年のこと。世界に通用するワインを造る事ができる理想の場所を見つけるため、週末の殆どを使って太平洋沿岸を、くまなく探して回りました。視察した畑や栽培農家の数は、300を優に超えるといいます。
最終的に、フリーマン夫妻が辿り着いたのはソノマ・カウンティの西部、険しい丘の中腹を冷たい海風が吹き抜けるこの場所でした。ここで育つブドウは冷涼な気候の影響でゆっくりと成熟し、フレッシュな酸を保った、ピュアでフレーヴァー豊かな果実となるのです。
著名醸造家が見出したアキコさんの天賦の才能
フリーマンの初代ワインメーカーは、カリフォルニアでも指折りの醸造家エド・カーツマン。オーガスト・ウェストや、ロアーなどを手掛けたピノノワールとシャルドネのスペシャリストです。
フリーマンを設立した2000年代のカリフォルニアは、果実味たっぷりのワイン隆盛の時代。他のワイナリーは、こぞってブドウの熟度を上げようとしていました。そんな中でもフリーマン夫妻とエド・カーツマンは、トレンドに影響されることなく、一貫して自分たちの理想とするバランスの良さと洗練性を追求していったのです。
その結果エドは、フリーマン夫妻が追い求めていた早摘みのブルゴーニュ・スタイルのワインを確立。それと同時に、ワイナリーの手伝いをしていたアキコさんのワイン造りに対する才能にも気が付きました。
ブルゴーニュワイン好きの父と『飲み友達』だったことで培ったアキコさんの類まれな味覚と嗅覚に目を付けたエドは、数年にわたって後を継ぐように促し、自身のワイン造りの技術を伝授しました。
2010年以降、アキコさんは自社畑での有機栽培から提携するブドウ栽培者の選定、発酵、澱引き、ロットごとの出来の評価、ブレンドに至るまで、ワイン造りのあらゆる行程を統括。
現在、アキコさんはカリフォルニアでワイナリーと畑を所有する唯一の日本人オーナー女性醸造家として知られています。
もちろんアキコさん自身だけでなく、フリーマンのワイン・スタイルは世界からも注目を浴びるように。各国の著名レストランのワインリストに採用され、小さいながらも著名なブランドに成長しました。
2015年には、オバマ前大統領が安倍首相を招いて行われたホワイトハウス公式晩餐会で、涼風シャルドネ2013が振る舞われました。日本人醸造家が手掛けるワインがホワイトハウスで使用されるのは初めてのことで、全米でも注目を集めたといいます。
ワイナリーに刻まれる思い出の数々
フリーマンのワイナリーでは、家族の大切な思い出に由来する名前や数字などをいろいろな所で見ることができます。
ひとつは、ワイナリー内のワインカーブ入り口に“9・28・85”と刻まれた楔(くさび)石。この数字は、フリーマン夫妻の出会った運命の日、1985年9月28日を意味します。
この日、ヨットでカリブ海に向かう予定だったケンはハリケーン“グロリア”の影響で予定を変更。故郷のニューヨークでパーティに立ち寄りました。そこで渡米したばかりのアキコさん出会い、一目惚れしたのです。カジュアルな装いの参加者が多い学生たちのパーティにも関わらず、シャネルのドレスを纏ったアキコさんを気にせずには居られなかったそう。
二人はお互いのワインへの情熱で意気投合したとか。この運命の日がなければ、ワイナリーは存在し得ませんでした。
ふたつ目は、最初に購入した自社畑“グロリア”の名前。
ケン&アキコ夫妻の『運命の出会い』となったハリケーン“グロリア”から名付けられたことは間違いありませんが、実はもう一つ由来があります。
このグロリアの畑は、以前は隣人が所有していたりんご園でした。そしてその隣人の名前こそが“グロリア”さんだったのです。奇跡のような偶然でした。
フリーマンの自社畑について
ケン&アキコ・フリーマン夫妻にとって、『特別な個性を持ったピノノワールを造る』という考えの中心には常に2つの自社畑があります。
グロリア・ヴィンヤード
グロリア・ヴィンヤードは、ワイナリーに隣接する5.7haのブドウ畑。2005年に夫妻が取得するまでは、りんご園が広がっていました。
この畑は、ロシアン・リヴァー・ヴァレーの中でも最も冷涼な最西端“グリーン・ヴァレー・オブ・ロシアン・リヴァー・ヴァレー”AVAにあり、太平洋からわずか20kmの距離。急勾配の山の中腹は水はけが良く、ブドウ栽培に最適なゴールドリッジの砂質ローム土壌と、冷涼ながらも日当たりは良い気候は、ピノノワールにとっての理想の場所です。
畑は6つのピノノワールの区画で構成。それぞれにスワン、ポマール、115、ラ・ターシュ、カレラといったアキコさんお気に入りのクローンが植えられています。可能な限り有機農法とバイオダイナミック農法を採用し、巣箱がフクロウなどの猛禽類を呼び寄せ、自然な形で害獣であるネズミ駆除を行っています。様々なカバークロップで土壌を補い、化学的な介入は最小限に抑えています。
極限の気候と標高の影響で、収量は1haあたり3~5トンとばらつきがありますが、その結果、非常に研ぎ澄まされた、複雑味を持ったワインができあがります。
ユーキ・ヴィンヤード
2007年、夫妻はオクシデンタルに1860年に拓かれた牧羊場だった20haの土地を購入し、フリーマン・ランチと名付けました。このうち9haは環境保全のために生涯手つかず森林を残す取り組みを行っています。
ユーキ・ヴィンヤードのブドウ畑はフリーマン・ランチ内にあり、5.6haの場所にピノ ノワールと少量のシャルドネが植えられています。開墾当初から有機栽培が行われており、畑は、水、カバークロップ、害虫駆除、最適な生息環境の維持などが細心の注意を払って管理されています。
この場所は太平洋からわずか8km、標高300mの人里離れた所にあり、険しい斜面や霧に包まれた崖は、ブドウを栽培するには決して容易な場所ではありません。
それでも、この厳しい環境でブドウを育てることには大きな見返りがあります。過酷な環境で育つブドウの樹からは、1haあたりわずか3~5トンの収穫しかありません。
しかし、その果実は少量ながらも他に類を見ない特別なもの。それは、研ぎ澄まされたフレーバーと溢れんばかりのピュアな味わいを備えた、妥協なきワインとなります。
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