ピゾーニ エステートPisoni Estate
ピゾーニ・エステート早わかりポイント
- 有名生産者が指名買いする素晴らしいブドウを生む名栽培家ファミリー
- ワイン評論家ロバート・パーカーが“サンタ・ルチア・ハイランズのグラン・クリュ”と称賛
- ピノノワールの一部にはあのラ・ターシュをルーツに持つブドウ樹も
- ピゾーニのピノが人気マンガ『神の雫』で北京ダックとのマリアージュ回に登場
- シャルドネもすごい!ワインスペクテイター誌がカリフォルニア最高の畑に選出したソベラネス
カリフォルニア・ピノノワールの最上級
ピゾーニ・エステートは、モントレー湾から内陸に上がったサリナスヴァレーを見下ろす高台、サンタ・ルチア・ハイランズにある家族経営のワイナリーです。
創業者ゲイリー・ピゾーニはサンタ・ルチア・ハイランズを屈指のピノノワール産地に育て上げたパイオニア。ワインスペクテイター誌の記者が“ゲイリー・ピゾーニほど、サンタ・ルチア・ハイランズに大きな影響を与えた栽培家はいない”と語るほどの大きな影響力を持っています。
このような評価をされる最大の要因は、このサンタ・ルチア・ハイランズをブドウ産地として切り開いただけでなく、ずば抜けた品質のブドウを栽培することができるから。
そのため、ピゾーニ・ファミリーの畑で栽培するブドウは有名ワイナリーからも大変な人気でオファーが絶えません。現在も、ピーター・マイケル、コスタ・ブラウン、パッツ&ホール、テスタロッサなど指折りのワイナリーが、ピゾーニのブドウを使って高評価のワインを作っています。
現在、ピゾーニ・エステートが手掛けるワインブランドは『ピゾーニ』『ルチア』『ルーシー』の3つ。
中でも、『ピゾーニ』は愛好家垂涎の逸品。ピゾーニ・エステートがピゾーニ・ヴィンヤードのブドウで自ら醸造するピノノワールは愛好家の間で『ピゾーニ・ピゾーニ』と呼ばれ、その希少価値の高さからリリースされると即完売してしまうほどの人気を誇っています。
ちなみに、ピゾーニ エステートのピノノワールは、有名なワイン漫画「神の雫」にも登場。北京ダックとのマリアージュで対決の中で“大河のように流れ続ける『皇帝のクロニクル』のマリアージュだ”と例えられ、主人公神崎雫がこのマリアージュ対決を勝利しています。
ピゾーニ・エステートの歴史
モントレー郡サリナスヴァレーはレタス、セロリ、ブロッコリーなどの野菜を多く栽培していることから“世界のサラダボウル”と呼ばれる場所。ゲイリー・ピゾーニの両親、エディ&ジェーン・ピゾーニ夫妻もここサリナスヴァレーの地で、ピゾーニ・ファームを営んでいました。
ゲイリーがワインに関心を持つようになったのは、サンノゼ州立大学で心理学を学ぶ学生だった頃。
イギリスのワイン評論家の著書『The Great Vintage Wine Book』を片手に、行きつけのワインショップでワインを収集したり、時には祖父母が禁酒法時代に使っていたという年代物のタンクでワインを醸造することもあったとか。
このようにワインへの愛情に溢れたゲイリーが、ブドウ栽培や醸造への道を夢見るのはもはや必然でした。
1982年、ゲイリー・ピゾーニは元々放牧地用に購入したサンタ・ルチア・ハイランズの土地に葡萄を植えることを決意しました。しかしこの場所は、サンタ・ルシア山脈の霧が立ち込め、水源が乏しく花崗岩が混じった固い斜面。多くの人はブドウを栽培することに反対しており、父エディでさえゲイリーの行動を訝しんでいたそう。
それでもゲイリーは、この地でブドウを育てるという夢を諦めませんでした。冷涼なモントレー湾の影響を受けるサンタ・ルチア・ハイランズは、ピノノワールやシャルドネの栽培に最適だと信じていたのです。
ゲイリーはブドウ畑に灌漑設備が無い中、サリナスヴァレーの谷底から毎日水を運びました。それも、井戸が掘り当てるまでの8年もの歳月にわたって。
8年の歳月を要した水源の確保
モントレーのような雨が少ない産地のワイン生産者にとって、信頼できる水源を見つけることは金脈を見つけるのと同義。逆の言い方をすれば、水源が見つからないことは死活問題でした。
ゲイリーは、畑まで水を運ぶ傍らで何度も井戸掘りに挑戦しました。ときには、ダウジングと呼ばれる水脈探知術に頼ることさえありました。しかし、なかなか目当ての水源にはたどり着きません。
掘削作業は1回につき25,000~30,000ドルの多額の費用がかかります。それが何度も失敗に終わると、普通であれば不安に感じる状況。それにもかかわらず、ゲイリーは「この牧場に水があることはわかっている。ただ、まだ見つけていないだけだ」と楽観的でした。
その間、眉をひそめる父エディ。しかし、母ジェーンはゲイリーの味方でした。母は『父が不在の日』をこっそり教えてくれるのです。『井戸を掘るなら今よ!』と。
そして6度目となる1991年、ついに掘削中の場所から間欠泉のように水が噴出したのです。「水を見つけたあの日は、おそらく私の人生で最も幸せな瞬間だった」とゲイリーは語っています。
ブドウ栽培家としての成功と念願のワイン造り
必要な水源の確保と、ゲイリー丹精込めたブドウ栽培により育った高品質のブドウは、やがて腕利き醸造家たちの目に留まり始めます。
アルカディアン、パッツ&ホール、ピーター・マイケルなどの一流生産者たちが、ピゾーニ・ヴィンヤードの名前を記したワインをリリースし、このワインが瞬く間に評判を呼んでいきました。
ワイン専門誌“ワインスペクテイター”が1999年に特集したピゾーニ・ヴィンヤードの台頭についての記事によると、ピゾーニのブドウは当時ナパで最も高価なカベルネのブドウと同等の1トンあたり4000ドルの高値で販売されるようになったとか。
ピゾーニ ヴィンヤードが、カリフォルニアの“カルト” ヴィンヤードの1つとなることで、はサンタ ルシア ハイランズ地域一帯の名声も高まっていきました。
そして、1998年。ゲイリーはついに自分たちのワイナリー、ピゾーニ・エステートを設立。長男マークがヴィンヤード・マネージャー、次男ジェフがワインメーカーとなり、ピゾーニ・ヴィンヤードからの自社瓶詰ワインをリリースしました。
この『ピゾーニ・エステート』が手掛ける『ピゾーニ・ヴィンヤード』は通称『ピゾーニ・ピゾーニ』と呼ばれ、ワインラバー垂涎のワインとしての地位を確立。あの、ワイン評論家ロバート・パーカーからは、“サンタ・ルチア・ハイランズのグラン・クリュ”と称賛されています。
現在、ピゾーニのブドウ畑とワイナリーは息子のマークとジェフたちが中心となって運営。父ゲイリーの信念はしっかりと息子たちへと引き継がれています。
ゲイリーの情熱を引き継ぐ次世代のピゾーニ・ファミリー
ブドウ栽培担当:マーク・ピゾーニ
長男のマーク・ピゾーニはブドウ栽培を担当。カリフォルニア大学デービス校で農業経済学の理学士号を取得し、コーネル大学で農場経営管理の修士号を取得しています。
幼少の頃から父や祖父と一緒に畑で学んだ実践的な農業スキルと、学問の世界で学んだ知識を融合させ、ピゾーニ、ゲイリーズ、ソベラネスの各ブドウ畑を手入れしています。
2015年には、北米のワイン業界誌Vineyard and Winery Managementにおいて『北米で称賛されるブドウ栽培者20人』の一人に選出。マークの他に選出されたのは、カーネロス ヴィンヤードのラリー・ハイドやソノマの有名栽培家ユリシス・ヴァルデス、ハーシュ・ヴィンヤードのデヴィッド・ハーシュなどの巨匠揃いです。
ワインメーカー:ジェフ・ピゾーニ
次男のジェフ・ピゾーニはワイン醸造を担当。子どもの頃から父のワイン造りを手伝っていたジェフは、ワイン造りに興味を持ち、カリフォルニア州立大学フレズノ校で醸造学の理学士号を取得。ピゾーニの醸造家になる前は、ピーター・マイケルなどで経験を積みました。2009年からはフォート・ロス・ヴィンヤードでもワインメーカーを務めています。
また、ジェフの妻はパルメイヤーで腕を奮った新進気鋭の女性ワインメーカー、ビビアナ・ゴンザレス・レーヴ。彼女と共同で手掛けるワインブランド“シェアード ノーツ”も、ピゾーニとは異なる魅力が人気です。
ピゾーニ・ファミリーが手掛けるワインブランド
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ピゾーニ
1998年、ピゾーニ・ファミリーが最初に手掛けた自身のワインブランド。カリフォルニアのグラン・クリュ畑から生まれるワインは、ピゾーニ・ピゾーニの愛称で知られ、リリースされるとあっと言う間に完売するマニア垂涎のワインです。
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ルチア
2000年にスタートしたピゾーニ・ファミリーの主幹ブランド。サンタ・ルチア・ハイランズから取った「ルチア」を冠したワインブランドで、サンタ・ルチア・ハイランズの3つの自社畑からピノ・ノワール、シャルドネ、シラーを造っています。
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ルーシー
ピソーニ・ファミリーが造るジューシーでフレッシュなカジュアルワイン・ブランド。次男で醸造家のジェフが毎年ゲストのために2樽だけ作っていたロゼを、父ゲイリーがリリースしようと提案したのがきっかけ。現在ではロゼ、ホワイト・ブレンド、ガメイの3種を展開。利益の一部を“乳がん研究”、“海洋保護”、“消防活動”に寄付しています。
ピゾーニに対する世界的な評価
- 2013年:ワインスペクテイター年間TOP100にルチア・ゲイリーズ・ピノ・ノワール2011が選出(74位)
- 2018年:ジェブ・ダナック年間トップ50ワインにピゾーニ・エステート・ピノ・ノワール2016が選出
- 2019年:ジェブ・ダナック年間トップ100赤ワインにルチア・ソベラネス・ヴィンヤード シラー2017が選出
- 2021年:ジェブダナック年間TOP100にピゾーニ・エステート ピノノワール2019がランクイン
- 2023年:ワインスペクテイター年間TOP100にルチア・ソベラネス・シャルドネ2021が選出(89位)
- 2020年:持続可能なワイン栽培リーダーシップに対して贈られる名誉あるカリフォルニア グリーン メダルを受賞
- 2021年:カリフォルニアワイン愛好家を代表する雑誌『 Connoisseur's Guide to California Wine』がワイン醸造ファミリー・オブ・ザ・イヤーにピゾーニ家を選出
- 2022年:シャナ・クラーク著『死ぬ前に訪れるべき150のブドウ園』にピゾーニ・ヴィンヤードが掲載
- 2023年:ワインスペクテイター誌特集『カリフォルニアの最高のシャルドネ畑』でソベラネスを紹介
ピゾーニの自社畑
ピゾーニ・ファミリーが手掛ける自社畑は、一番最初にブドウを植えたピゾーニ・ヴィンヤードの他に、ゲイリーの親友フランシオーニ・ファミリーと共同で手掛ける2つのブドウ畑があります。
どれも銘醸畑として知られており、ピゾーニ・ファミリーが自身でワインを造るだけでなく、有名ワイナリーにもブドウを販売。他ワイナリーがピゾーニのブドウ使って醸造したワインにおいても、評論家から高い評価を受けています。
ピゾーニ・ヴィンヤード
1982年、ゲイリー・ピゾーニが初めて植樹した、カリフォルニアで最も人気のあるぶどう園のひとつ。2haからスタートしたこの畑は、現在は39エーカーの広さに。ピノノワールは32エーカーで、その一部が有名なラ・ターシュからの挿し木と言われています。その他シャルドネが4エーカー、シラーが3エーカー。
この畑のブドウを使って造る『ピゾーニ』は、ワイン評論家ロバート・パーカーから、“サンタ・ルチア・ハイランズのグラン・クリュ”と称賛されています。
土壌は花崗岩が点在し、古代の河が作った沖積土壌、山から流れる小さな川の扇状地土壌などが混ざり合い、シストやクォーツも散見します。平地の畑が多いサンタ・ルチア・ハイランズの中で、ピゾーニは標高300m以上に位置し、霧は滞留せず冷たい風のみが畑に吹き込みます。また、この地区の他の畑よりやや日照が長いのが特徴です。
ゲイリーズ・ヴィンヤード
1997年、ゲイリー・ピゾーニが、ロアーを手掛けるゲイリー・フランシオーニと共同で設立したブドウ畑。ウォール・ストリート・ジャーナルから「カリフォルニアで最も有名なブドウ園の一つ」と評されています。
2人は幼い頃から一緒に遊ぶ大親友。あるとき、ゲイリー・フランシオーニはサンタ・ルチア・ハイランズで50エーカーの土地が売りに出されていると聞き、すぐに友人のゲイリーピゾーニに連絡。2人はこの土地に魅了され、ともにパートナーとして新たな畑を開拓することに。共に名前がゲイリーだったことからゲイリーズ(二人のゲイリー)と命名されました。
ルチア・ゲイリーズ・ヴィンヤーズのワインボトルには、親友2人のトラクターが並んで描かれているのを見ることができます。
サリナスヴァレーを見下ろす東向きの沖積台地には、ピノノワールが46エーカー、シラーが4エーカー植えられています。土壌はアロヨセコの砂質ロームで水はけがよく、年間平均降雨量は10~13インチ。朝霧とモントレー湾からの冷たく安定した風が、ブドウの木の長く安定した生育期を作り出します。
ピノノワールはピゾーニ・クローンを主体に、カレラ、マウント・エデン、クローン23 。シラーはエストレラ リバー クローンを植樹しています。
ソベラネス・ヴィンヤード
ゲイリーズ・ヴィンヤードの向かい側に2008年に植樹した38 エーカーのブドウ畑。こちらもゲイリーズ同様にピゾーニ家とフランシオーニ家が共同で管理。2023年にはワイン スペクテイター誌の特集『カリフォルニアの最高のシャルドネ畑』で紹介されました。
東向きの沖積台地で、谷底に向かって5度緩やかに傾斜。ソベラネスの山側にはオークの木が点在し、中央半分はゲイリーズに直接つながっています。下部のブロックは岩だらけで、丘がなだらかに続いています。
岩の多い土壌にブドウの樹を植えると植物にストレスがかかり、ミネラルの風味が現れるそう。また、この地域の気候はワインに自然な酸味をもたらします。この土壌と天候がソベラネスのブドウに影響を与え、ミネラル感はさらに高まるのだといいます。
ピノノワールが27エーカー、シャルドネとシラーが10エーカー植えられています。ピノノワールはピゾーニ・クローンとごく一部に667クローンを植樹。シャルドネはオールド ウェンテ クローン、シラーはアルバン クローンです。